コラム
» 2011年06月03日 08時00分 UPDATE

吉田典史の時事日想:東京電力にみる、社長と会長の奇妙な関係 (1/3)

福島第1原発の事故を受け、東京電力の清水社長が辞任した。歴史に残る事故を起こした責任は重大で、辞任は当然だろう。しかし勝俣会長はなぜ会長職にとどまることができたのだろうか。日本企業の縮図ともいえる、社長と会長の関係に迫った。

[吉田典史,Business Media 誠]

著者プロフィール:吉田典史(よしだ・のりふみ)

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2005年よりフリー。主に、経営、経済分野で取材・執筆・編集を続ける。雑誌では『人事マネジメント』(ビジネスパブリッシング社)や『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)、インターネットではNBオンライン(日経BP社)やダイヤモンドオンライン(ダイヤモンド社)で執筆中。このほか日本マンパワーや専門学校で文章指導の講師を務める。

著書に『非正社員から正社員になる!』(光文社)、『年収1000万円!稼ぐ「ライター」の仕事術』(同文舘出版)、『あの日、「負け組社員」になった…他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)、『いますぐ「さすが」と言いなさい!』(ビジネス社)など。ブログ「吉田典史の編集部」、Twitterアカウント:@katigumi


 東京電力の清水社長が辞任した。福島第1原発の事故を始め、一連の不祥事の経営責任を明確にするためという。勝俣会長は、その職にとどまることになった。

 ここ2カ月、東京電力は世間を騒がせてきた。記者会見での要領を得ない応対、社長の緊急入院、突然の計画節電、社長ら首脳陣の土下座謝罪、そして2011年3月期決算で過去最大の1兆2473億円の最終赤字。それを受けて、一応のリストラ策。

 これらいずれもが会社として問題行為なのだが、私が注目してきたのは社長と会長のあの関係である。この会社に限らないが、ベンチャーから大企業まで日本企業の社長と会長の関係は実にあいまいに見える。その意味で、東京電力は日本の企業の縮図である。ずばり、社長と会長はどちらがエライのだろうか?

怖くてぞっとする無責任な体制

yd_yoshida2.jpg 辞任した清水正孝前社長

 役員の制度改革にも力を注ぐ人事コンサルタントの林明文さん(トランストラクチャ代表)は、双方の力関係を見極めるためには社長や会長という名称ではなく、その前に代表取締役、つまり、代表権があるかどうかが大切と言う。

 「会長、社長、専務、常務といった役職名は商法など法律の概念にはない。代表権とは、会社を代表して契約の締結などを行なうことができる権利を意味する。だから、ただの会長であるのか、それとも代表取締役会長であるのか。それでおよそ察しがつく。会長が代表権を持つというのは、社長を部下として使おうとしているととらえることができる。

 勝俣会長は代表取締役が付いている以上、発言力は強く、清水社長をおそらく“部下”として使っていたのだろう。社長に起用したのも、今回辞めるように促したのも会長である可能性が高い。社長と会長による、権力の2重構造になっていたのではないか」

 この指摘は、大事である。数年前、取引先に社員数600人ほどの教材制作会社があった。そこには、代表取締役社長と代表取締役専務がいた。ほかの役員には、代表権がない。「この2人で役員会を動かしているが、責任の所在があいまい」と部長たちからよく聞いた。その後、社長が代表取締役会長に、専務が代表取締役社長になった。ほかの役員らは退任していった。

 それは、代表取締役社長と代表取締役専務の2人がそれぞれ上がっただけで、組織の機能としては何も発展していないことだ。依然として2人による私物化でしかない。実は、こういう役員がいる日本企業は少なくない。

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