「試しに3カ月だけ付き合って」――経済学的な恋愛アプローチ(1/2 ページ)

» 2011年06月01日 08時00分 公開
[籔孝昭,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:籔孝昭(やぶ・たかあき)

AllAboutガイド。金融機関で新規事業の立案や子会社の設立など企業経営全般に携わるとともに、大学や企業で「論理思考」や「マーケティング」に関する講義を行う。そこで、企業が求める人材と学生のギャップを目の当たりにして、教育業界に転進。現在はAllAboutで中学受験のガイドを担当するかたわら、雑誌・新聞などに寄稿をするとともに、私立小学校の設立に向け活動中。


 使わなくなったゴルフクラブや着なくなった服、それに大量の本にCDなど、今では利用しなくなったモノが私の部屋を占拠しています。

 もう使う予定はないのに、捨てることも売ることもできずに、そのまま取っておいてしまう。誰にでもこんな経験はあると思います。使わなくなったゴルフクラブや本を売れば、お金を手に入れられるし、ゴルフクラブや本を置いていたスペースを有効活用できることを分かっているのに、そのままにしておく。

 このように、私たちの日常は、合理的な経済人ではありえない保有行動で満ちあふれています。私たちが不合理な保有行動を続ける理由は、行動経済学的効果として保有効果が考えられます。

 保有効果とは、自分の所有するものに高い価値を感じ、「手放したくない」と思う現象のこと。クルマを買い換える時には、多くの人が、新車の値引き額よりも自分が乗っていたクルマの下取り価格に強い関心があると言われています。

 この保有効果を利用しているのが、「使ってダメだったら2週間以内に返品してください。代金は無料です」という通販の試供品。これは、まだ買ってもいないのに「保有効果」が働いて、滅多に返品されないことを通販業者は知っているのです。

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