「転職で年収アップ!」はウソ?メディアとWebと人材と(1/3 ページ)

» 2011年06月01日 08時00分 公開
[中嶋 嘉祐,Business Media 誠]
誠ブログ

 年収500万円が700万円に!――。そんな広告を見た記憶はありませんか?

 脳天直撃のキャッチコピーに刺激され、ついつい転職を考えてしまった方もいらっしゃるかもしれません。ですが、この手の広告に対しては、ウソではないものの疑いの目を向けてください。転職すると年収アップするより、実はダウンする確率の方が高いのです。

 半年ほど前のデータですが、リクルートエージェントが2010年9月に発表したデータによると、転職前後で年収は「前職よりは下がった」が46.4%。一方、「前職よりは上がった」は38.3%になっています。

転職した会社の内定時に提示された年収について教えてください(出典:リクルートエージェント)

 「転がる石にコケむさず」とも言います。人材業界に片足を突っ込んでいる私が言うのもアレですが、転職は短期的に見た場合、年収面以外でもマイナスになることが多いのです。さらに短期間に何度も繰り返していると、多くの企業から見向きもしてもらえなくなります。実際、人材紹介会社に候補者集めを依頼する時に「転職回数3回以内」といった具体的な条件を付ける企業もありますし。

 こんなネタ振りをしたのは、「今の職場/年収に不満があるから転職する」というネガティブな理由で転職を考えている人が、特に20代〜30歳前後で多いように思うからです。心情的には理解できますが、短絡的な転職は決してプラスにはなりません。

 転職するとなぜ年収が下がるのでしょうか? もちろん、2010年9月のデータなので、景気の影響も少なからずあるでしょう。ですがここでは別の理由を挙げている記事を紹介しましょう(かなり前になりますが、私が読んで腑に落ち、今でも記憶に残っています)。

 →ロサンゼルスMBA留学日記:MBA後の転職の難しさ――ダーマ神殿に行ったら“レベル1”になった

 ここではタイトルに「MBA後」と入っていて、未経験職種への転職の場合とされています。未経験の仕事なら転“職”でレベル1になるのもうなずけますが、同業界・同職種の転“社”であったとしても、転職すると仕事のパフォーマンスが短期的に落ち込むこともあるのです。

 パフォーマンスが下がるのに年収が上がる。そんな都合の良い話は普通に考えるとないですよね。

 転職するとなぜパフォーマンスが下がるのか、逆に転職することがパフォーマンスアップやキャリアアップにつながるケースはあるのか。そういった話はいずれ場をあらためて掘り下げたいので、ここではいったん筆を止めておきます。

 と、ここまでは「短絡的に転職を考えるな」というメッセージを送りたいので、ネガティブな話の展開をしてきました。が、あらためて数字を見てみると、年収アップ:年収ダウン=38.3%:46.4%というわけで、そんなに下がってばかりでもありません。2000年前半の調査の中には、年収アップの割合の方が高かった年もあったようです。

 先ほどのデータを細かく見てみると、年収アップした層は、26〜30歳の層の前後のようです。そのデータも多少踏まえつつ、年収アップするのはどんなケースか、いくつか思い浮かぶものを挙げてみます。

  • 前職での待遇が明らかに同業界や同職種の水準よりも悪い
  • 前職の業績はイマイチだったが、転職先はイケイケ
  • 年功序列型のトラディショナルな企業から、パフォーマンス重視の外資・ベンチャーに転職
  • 人事評価が適正に行われていない
  • 転職者が転職先企業が欲しているナレッジ/コネクション/ブランドを持っている
  • 前職は残業手当が付かなかったが転職先では付く

 主だったものはこんなところでしょうか。私より詳しい方もいらっしゃると思うので、ご意見ありましたら加筆・修正しますので、ぜひ私のTwitterアカウント(@YoshiNaka)宛にリクエストを。

       1|2|3 次のページへ