SNSはクルマのマーケティングを変えるか?――トヨタ自動車の挑戦(1/2 ページ)

» 2011年05月31日 08時00分 公開
[猪口真,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:猪口真(いのぐち・まこと)

株式会社パトス代表取締役。


 環境・エネルギー問題へのエースとして登場したEV(電気自動車)だが、これまでになかったマーケティングアプローチが生まれている。

 1つ目は、トヨタ自動車が行ったセールスフォース・ドットコムとの提携によるSNSサービスの発表だ。セールスフォース・ドットコムのプレスリリースによると……、

 「トヨタフレンド」は、人とクルマ、販売店、メーカーをつなぐソーシャルネットワークサービス で、カーライフに必要なさまざまな商品・サービス情報などをお客さまに提供。例えば、EV及びPHVの電池残量が少ない場合、充電をうながす情報をあたかもクルマの「つぶやき」としてお客さまに発信する。 さらに、「トヨタフレンド」はお客さまが指定するプライベートなソーシャルネットワークでありながら、TwitterやFacebookなどの外部のソーシャルネットワークサービスとも連携し、家族や友人とのコミュニケーションツールとしても利用できる。これらの情報はスマートフォンやタブレットPCなど、最新の携帯端末を通して提供される。

 ……と、結局のところ、小難しい表現での発表となっているものの、若者にクルマが売れない実態を憂う私としては、願望を持って、この取り組みに期待したい。

 私見だが、クルマが売れなくなった原因の1つに、クルマの徹底的なコンピュータ化があると感じていた。

 かつてクルマといえば、若いお兄さんたちが、ひまさえあればボンネットを開けたり、タイヤやホイールを交換したり、思い思いにいじって、「ジブンのクルマ」として楽しんでいた。今、Macを自分なりにカスタマイズしながら使い勝手を楽しむかのように、だ。

 2010年初頭、トヨタ自動車の急加速問題がアメリカで大騒動になった時、ブレーキがコンピュータ制御で作動することに驚いた人は多いだろうし、クルマが自分たちの手の届かないところにいってしまったと感じている人は少なくないはず。かなりのクルマ好きでも、自分でクルマのメンテナンスがきちんとできる人は少ない。

 今、クルマの状態をきちんと把握するのは一般人には難易度が高すぎて、いちいちカーディーラーや整備工場に持っていかなければならない。安全性の問題は置いておくとしても、PC並みに個人ユーザーの責任でさまざまな設定やカスタマイズができ、かつてのメカいじりの延長でクルマに接することができればクルマへの親近感はさらに湧くのではないだろうか。クルマのことが分かり、自分だけの感覚を持てることは、クルマへの愛着を増すための大きな要素だと思う。

 また、同リリースによれば、トヨタ自動車の豊田章男社長は「ソーシャルネットワークサービスによってコミュニケーションの手法は劇的に変化しており、こうした流れに対応しクルマも変化していくことが重要である。今回の提携は、私が常々述べている『もっといいクルマ』をつくるためのチャレンジでもある」と語っている。スマートフォンやタブレットPCで、ユーザー間やユーザーと販売店、そしてクルマとの会話やコミュニケーションが可能になれば、新しいステージでの人とクルマの深い関係が構築できるかもしれない。

 セールスフォース・ドットコムのSNS技術とスマートフォンでこうしたことが解決できるのであれば、クルマのある生活はまた1つ階段を登ることができるのだろう。

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