コラム
» 2011年05月27日 08時00分 UPDATE

郵便局の「取次ぎサービス」がうまくいかない理由

配達物の減少によって減収が続いている郵便事業会社。新たな収入を得ようと、商品を取り次ぐサービスの拡充に注力しているが、うまくいっているとは言えない。取次ぎサービスを成長させるために、大切なことは何なのだろうか。

[川口雅裕,INSIGHT NOW!]

著者プロフィール

川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

イニシアチブ・パートナーズ代表。京都大学教育学部卒業後、1988年にリクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。2010年1月にイニシアチブ・パートナーズを設立。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ


 郵便局の業績が厳しいようです。特に郵便事業会社が、配達物の減少によって減収が続いており、これが全体の業績の足を引っ張っています。

 そこで注力しているのが、商品を取り次ぐサービスの拡充。集配の際に郵便物以外のさまざまな商品やサービスを勧め、売っていくことで、配達物の減少を食い止め、販売手数料の収入も得ていくのが狙いです。だから、拡販を図りたい会社には、「何でもいいから売れる物をどんどん持ってきてほしい」というのが本音だと思います。ホームページの業績開示資料では、新しい取り組みの中の最初の項目に次のようにあり、業績回復の切り札的存在と考えている風に見えます。

総合生活取次ぎサービス(郵便局のお取次ぎ)では、平成22年9月末現在、全国の郵便局において「引越」「携帯電話」「ハウスクリーニング」「光ファイバー接続」「ホームセキュリティ」「郵便料金計器」の6種類の取次ぎサービスを実施しています。

 普通の民間企業ではまず不可能な、全国2万4000カ所という網の目のように立地する郵便局が、たくさんの郵便局員を使って商品を紹介し、販売・配達・代金回収までしてくれるというのですから、魅力的な話です。取次ぎ料金も、売り上げの10%強のみと安い。「ウチの商品を扱ってくれ」という会社が先を争うように提案をし、郵便局の取り扱う商品が一気に増えても不思議ではありません。ところが、そうならないのはなぜか。

 1つには、郵便局が定めた仕様のチラシと申込書を、取次ぎ販売を委託する会社負担で、新たに作成しなければならないこと。郵便局が決めたレイアウトでなければ局員が処理しにくいといった理由で、一切の例外なく、既存のチラシや申込書を使うことはできません。また、すべての郵便局が同じ商品を同じように扱うことを前提としているため、地域全部の郵便局が配布する分を作成せねばならず、取次ぎを委託する会社からしてみれば、余計なエリアの分も作成しなければなりません。

 2つ目は、郵便局が顧客をよく把握していないこと。「非常に多くの人たちに、商品を紹介できます」と言われても、どのエリアにどんな人がいて、どんなニーズがあるのかといったことが分からなければ、売れるイメージが湧きませんから、「じゃあお願いします」とはなりません。たくさんの人間が預かったり配ったりしていることを強みとしているわけですが、そこにマーケティングが加わらなければ民間ではパートナーとして不十分だということです。

 ひと言で言うなら、パートナーシップを組むためのルールや体制、販売するための知恵やスキルが民間企業レベルになりえていない。郵便事業が厳しいからといって、「民営化がおかしかった」「このままではユニバーサルサービスが維持できない」という議論は尚早で、まずは民間企業にふさわしい組織に生まれ変わらねばなりません。

 多くの会社が取次ぎを委託したくなるように、ルールを柔軟なものに変更するとともに、マーケティングや販売手法を見直してレベルアップを図れば、自力による業績回復の余地はまだまだあると考えます。(川口雅裕)

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