『東のエデン』『ピンポン』のアスミック・エース社長が語る劇場配給ビジネス(5/6 ページ)

» 2011年05月27日 14時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

アニメビジネスにさまざまな企業が参入するように

櫻井 映画ビジネスではパートナー選びも重要だと思うのですが、「こんな企業と一緒にやりたい」といったことはありますか。

豊島 最近私たちがユニークに感じているのは、グッドスマイルカンパニーというフィギュアをメインに手掛けて、頭角を現している会社です。安藝貴範社長が積極的にアニメを手掛けていこうとしているんですね。

『ブラック★ロックシューター』

 『ブラック★ロックシューター』(2010年)はグッドスマイルカンパニーが中心となって作ったアニメなのですが、「すごいな」と思ったのは、「アニメを作ってタダでばらまく」ということをされていたことです。「ばらまいてどうやってもうけるんですか」と安藝社長に聞くと、「自分たちは本業のフィギュアが売れればいいので、フィギュアの宣伝費の一貫でアニメを作る。タダでどんどん配って『ブラック★ロックシューター』の知名度を上げて、それでフィギュアが売れればビジネスとして成り立つんだ」とおっしゃっていました。

 クリエイター自ら配給する以外に、そうした異業種の方が映像制作に関わってくるというのも既存の会社にとってはやはり脅威だったりもします。ただ、脅威と思っているとともに、「それなら、そういう会社と一緒にビジネスをやっていけばいいんだ」とも思っていて、まだ発表できないのですが私たちもグッドスマイルカンパニーと新しいことをやろうとしています。アニメというすばらしいプラットフォームを通じて、いろんな商売のやり方がこれから広がってくると思います。

 アニメがテレビアニメ主体だった昔は、テレビ局と広告代理店、制作会社、そしてどちらかというと古いタイプの玩具メーカーだけで制作していて、私たちのような会社がそこに参入することはありえませんでした。しかし、2000年代になって、私たちのような会社や、グッドスマイルカンパニーのように新しい玩具メーカーも参入するようになってきていることはとてもいいことだと思います。私たちも配給や、DVD&Blu-ray Discの販売などで、既存のやり方ではない形でアニメを媒介にしたいろんなビジネスにチャレンジしていきたいと思っています。

櫻井 豊島さんにとって、アニメとはどんなコンテンツなんですか?

豊島 アニメというのは、一番多くの情報量をユーザーに提供できるプラットフォームではないかと思っています。ビジネスの立場を離れて言うと、「CGを多用した中で役者が演技をするハリウッド映画よりも、日本のセルアニメの方が多くの情報量をお客さんに届けられるのではないか」「表現する媒体としてこれ以外にすばらしいものはないな」と思っています。アニメの強さ、特にジャパニメーションの強さはそこにあるのかなと。

 ハリウッドのCG主体の映画を見ていても、「細密な絵で、髪の毛もふわふわしていて実写みたいだけど、何でこんなに情報量が少ないんだろう」と思ったりします。宮崎駿さんとかはそういうことを分かって、自分のもの作りをされているんだろうなあと思います。とても心を持っていかれますからね。もし、宮崎さんと将来お話しできる機会があれば、そんなことも聞いてみたいですね。

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