元朝日の高成田氏に聞く、なぜ震災で親を亡くした子供を助けるのか相場英雄の時事日想(2/4 ページ)

» 2011年05月26日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

なぜ基金なのか

――なぜ基金なのか?

高成田享氏

 子供たちを支援する基金はいくつかあるが、大きな慈善団体の場合は、事務経費の比率が高くなる傾向がある。子供に回るお金が多くなる仕組みを作ろうと思い立った。

 基本的には、個人からの寄付は全額子供たちに、そして企業からいただいた寄付の一部は、了解を得たうえで事務経費に回す仕組みを考えた。この範囲であれば、手弁当でできる。インターネット関連の維持費、パンフレット代などの経費については企業からの寄付を充当するというスキームを作った。

 現在、基金への反応が良い。大震災の悲惨な状況を知り、なんとかしなければという人が増えてきていることの証左だと思うし、嬉しいことだ。

 各種の団体でも同じような取り組みを始めるところが出始めている。同時多発的に支援の輪が広がっていけば良いと思っている。結果的に支援の裾野が広がり、子供たちに届く金額も多くなる。

 私の始めた運動は小さいかもしれないが、こういう運動がいくつか重なることは悪いことではない。ただ、他の団体との統廃合といったことは現状考えていない。

――基金の形態は?

 現在は任意団体だが、いずれNPOにする。それなりの資格が必要となるが、徐々にやっていく。

 初めてこのような運動を行ってみて、企業から寄付を募ることが大変だと分かった。最大の理由は、(こども未来基金が)任意団体で寄付控除がない点だ。

 企業の人と話して分かったのだが、1つは株主に対して、寄付控除がある団体の方が説明しやすいという点がある。寄付控除を受けることができるのは、認定NPO、特定公益増進法人、通称・特増といわれるシステム、もう1つ特定公益信託で寄付控除が受けられる。ただし、いずれも認可までのハードルが高い。

 換言すれば、ハードルが高いところだから信用できるということなのだが、米国で計7年暮らした経験に照らすと、米国の寄付の仕方、NPOの仕組みはもっとずっと楽だ。もう少し米国流になっても良いかもしれないと感じた。

 寄付控除の他に、郵便物の経費が割高になってしまうことに頭を悩ませている。寄付税制の件とともに、米国のようにシンプルにいかないことを自分で運動を行ってみて痛感した。

 現在、寄付税制の資格を持った団体と、一部の業務をジョイントできないか模索している。子供たちを支援する、子供たちに渡る金額が増えればいいという目的が合致できればよい。

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