コラム
» 2011年05月25日 08時00分 UPDATE

路面電車でモーダルオプティマイゼーション――ヤマト運輸&京福電気鉄道 (1/2)

トラックや航空貨物から鉄道、船などより環境負荷の小さいものに物流手段を変更することをモーダルシフトという。しかし、それぞれの物流手段には強み弱みがあり、元々の物流手段が選ばれているのにもそれなりの理由があるため、モーダルシフトは容易には進まない。今回は新しい物流手段の特性を生かしてモーダルシフトの壁を乗り越えたヤマト運輸の例をご紹介する。

[中ノ森清訓,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:中ノ森清訓(なかのもり・きよのり)

株式会社戦略調達社長。コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供している。


 ヤマト運輸と京福電気鉄道は、輸送の効率化と地球環境への負荷軽減を目的に、京福電気鉄道の路面電車を活用した宅急便の輸送を開始することを発表した。

 取り組みの内容は、これまでヤマト運輸の物流ターミナルから嵐山担当営業所へ大型トラックで宅急便を輸送し、そこから2トントラックなどに宅急便を積みかえ配達していたものを、京福電気鉄道の路面電車車両を1両借り切り、京福電気鉄道の西院駅の車庫で台車ごと電車に積み込み、路面電車で嵐山駅および嵐電嵯峨駅でヤマト運輸のセールスドライバーが台車を受け取り、それをそのままリヤカー付き電動自転車に積み込み、各配送先に届けるというもの。

ah_nau1.jpg 出典:ヤマト運輸

 トラックや航空貨物を、より大量輸送が可能で、貨物1個当たりの輸送効率が高く、環境負荷の小さい輸送手段である鉄道や船舶による輸送モード(物流手段)で代替することをモーダルシフトという。しかし、モーダルシフトは簡単には進まない。それぞれの輸送モードには強み弱みがある。

 例えば、トラックは非常に小回りが利き、飛行機は海を越える場合には非常に迅速に貨物を運べる。一方で、鉄道や船は貨物1個当たりの輸送効率は高いが、線路や航路、駅、港に縛られ機動性に欠く。加えて、鉄道や船の場合、よほどの好立地に恵まれない限り、どうしても積み込みと積み下ろしとで積み替えが発生する。

 そのため、ドアtoドアで考えた時にモーダルシフトが必ずしも輸送の効率化には必ずしもつながらない時もある。また、輸送には顧客の求める納期や荷主が求める発送タイミングなどの制約がある。いくら輸送コストが低く、かつ環境負荷低減となっても、鉄道や船では必ずしもこれらの制約をかなえられない時もある。その時には、買い手や荷主企業が制約となっている物流への要求事項を緩めるか、モーダルシフトをあきらめるしかない。結果、モーダルシフトがなかなか進まないというのが現状である。

 一方で、環境意識の高まりから路面電車が見直され始めている。東京の銀座、北九州、宇都宮など、路面電車の新設の検討を進める自治体が増えてきている。路面電車のメリットは、トラックよりも渋滞の影響を受けにくく、鉄道よりもきめ細かい路線網を安価に敷設できることにある。実際にヤマト運輸は、今回の取り組みのメリットに、輸送効率の改善、車両台数の削減に加えて、渋滞の影響が減り時間通りに配送しやすくなることを挙げている。

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