スマートフォンと連携する腕時計、スマートウオッチが切り拓く新しい時代とは?(2/4 ページ)

» 2011年05月18日 08時00分 公開
[日高彰,Business Media 誠]

今までの腕時計の価値を崩さない

 実は、腕時計とほかの機器を接続しようという試みは今回が初めてではない。カシオでも過去には、赤外線機能を搭載し学習リモコンになるモデルや、電子マネーや社員証として使えるICチップを内蔵したモデルなどを開発しているほか、腕時計に搭載するためのさまざまな通信技術の研究・検討を行ってきた。

 しかし、腕時計と携帯電話などの機器とのワイヤレス接続を実現するにあたっては、電池寿命の短さが問題となっていた。すでに、Bluetooth機能を搭載した腕時計は先行商品が市場に出回っているが、それらはいずれも充電式。通信機能を使う際の消費電力が大きいため、数日使うごとに充電を行わなければならない。

 カシオでは、通信機能を搭載する代わりに充電が必要になると、腕時計としての使い勝手が低下することを憂慮し、これまでBluetooth腕時計の商品化は見合わせていた。一般に腕時計といえば、一度電池交換をすれば少なくとも1〜2年は動き続けるのが当たり前。充電を忘れたせいで、肝心なときに時刻が確認できないといったおそれがあっては、時計としての価値を損なってしまうという考えだった。

 ところがBluetooth Low Energy規格が登場したことで、通信を行っても充電なしで長期間動き続ける時計の可能性が見えてきた。中島氏は「腕時計に通信をさせるというニーズは昔からありましたが、Low Energyによって充電することなく2年の寿命をキープできそうだということで、今回開発が大きく進みました」と話し、Bluetooth Low Energyは「われわれにとってみると画期的・革命的な技術」であると評した。

 奥山氏も「通信技術自体はいろいろなものがありましたが、時計を定期的に充電しなければならないとなると、それはお客さまにとってストレスではないでしょうか。通信をするなら、今までの時計の価値を崩さずに機能を実現したいと考えていました」と話す。

 例えば初期の電波時計では、電波を受信するためのアンテナが時計の外へ張り出して無骨な形になっていたものもあったが、奥山氏は「従来のスタイルを崩してまで新しい機能を入れるべきかという点では反省点もあります」と振り返る。機能が増えるからといってほかの部分が犠牲になっては、多くのユーザーに広く受け入れられる商品にはならない可能性があるという考え方だ。

カシオ 奥山正良氏と中島悦郎氏

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