45度の坂を昇る! ウニモグに試乗した松田雅央の時事日想(5/5 ページ)

» 2011年05月17日 08時00分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]
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 博物館に展示されている約60台のウニモグは、1946年製のプロトタイプU6を含めすべて走行可能な状態に維持されている。すごいことではあるが、整備を続ければ平気で50年以上使えてしまうのがウニモグだ。

 抜群の機能性、耐久性、信頼性の代償として価格は高く、U5000タイプならばベースだけで13万ユーロ(1500万円)、それにオプションを追加してゆけば価格に上限はない。

 百番台タイプの機能はちょうど自治体が求める種類のものだが、こちらも価格は高い。そこで主に自治体をターゲットとして2006年から発売されている小型廉価版がU20タイプだ。機能は変わらないが、運転席部分をブラジルで生産するなどしてコストを削りベース価格を約9万ユーロ(1000万円)に抑えている。

※1ユーロ:115円

 それにしても、60年以上にわたりシリーズ生産されている自動車は珍しい。もちろん時代に合わせて技術革新を繰り返してはいるが、開発当時の基本コンセプトを踏襲しているという意味で同一車種と呼んでかまわないだろう。

 自動車に限らず工業製品はどれほど人気のシリーズであっても、いつの日か時代について行けなくなる。さらなる改良をあきらめ、それまでのコンセプトを捨てていちから開発した方が早道ということも少なくない。ウニモグが今も人気シリーズとして生き残っている理由は何だろうか。

 「変える理由がないからです。例えば、ウニモグを使用している自治体からは高い評価をもらっており、このまま開発生産を続けてくれという要望があります」とボランティアガイドのフェッファーさん。当然といえば当然の答えだが、こう言い切れる自動車が世界にどれほどあるだろう。

 ウニモグ開発チームが設定した方向性は、半世紀以上の時を超えた今も説得力を持ち続けている。卓越した先見性と柔軟性。敗戦を経験しても決して失われなかったドイツの「もの作りの魂」がウニモグには息づいている。

U4000の走行限界は上り45度、下り44度、水深1.2メートル、左右の傾斜38度

ウニモグ博物館(Unimog-Museum):

2002年までウニモグ生産工場のあったドイツ・ガッゲナウに2005年開館。有志の市民団体がダイムラーなどのサポートを得て運営する私立博物館。これまで延べ20万人の訪問者を迎えている。従業員は5人、ボランティアは約150人。

ダイムラーは、三菱ふそうトラック・バスとメルセデス・ベンツ日本とともに東日本大震災復興支援のためにトラックやオフロード車など計50台を寄付した(関連記事)

日本に寄付されたクルマ

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