東京電力は“潰せない企業”なのか藤田正美の時事日想(2/3 ページ)

» 2011年05月16日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

東電は潰せない会社なのか

東京電力の清水正孝社長

 国民感情は東電に厳しい。自民党の河野太郎衆議院議員の言葉が最も的確に国民感情を表現しているかもしれない。「逆さに振って鼻血も出ないということにならない限り、税金という国民負担で賠償することなどありえない」と河野議員は語っている。

 もちろんこうした状況を受けて、東電の株価は暴落した。今年の高値が2197円、震災後の最安値が292円、先週末(5月13日)の終値が453円だ。国が東電の優先株を保有するという報道で買われてこの水準になった。損害賠償のやり方がどうなるか、東電の負担がどのくらいになるか、含み資産をすべてはき出すことになるか、といった状況で変わってくる。

 海江田経産相がこんなことを言ったことがある。「東電株を生計の足しにしておられる方もいる」。要するに、配当を頼りにしている人がいるので無配にすると影響が出るというのである。この論理をさらに進めれば、東電の倒産などもちろんありえないという話になる。しかしこれはおかしな話である。公益企業といえども民間企業。その株主は持ち株の範囲で責任を負っている。会社が潰れれば株券は紙くずになるし、会社が成長すれば株価が上がって売却益を得ることができる。

 2008年のリーマンショックでは「大きすぎて潰せない」金融機関が話題になった。リーマンブラザーズは倒産させても、世界最大の保険会社AIGは米政府が支援した。さてここで問題である。東電という会社は果たして大銀行などのように「潰せない」企業かどうかである(東電の役員たちは「自分たちの会社がつぶれることはありえない」と考えているように見える)。

 しかしわれわれ利用者が、地域独占の電力会社を潰せないと考える必要はあるまい。電力の安定供給というのなら、他の電力会社(あるいは異業種からの新規参入組)に事業を譲渡するという考え方もありうるだろう。会社やグループも含めて解散価値が細かく計算され、電力事業に関係のない事業もすべて洗い出される。それこそ徹底的にリストラ、本来の意味での事業再構築がなされるはずだ。社債や長期借入金が6兆3540億円もある(2010年3月末)から、東電を潰すという話が出ると、債券市場が大混乱するという反論もありうる。しかし債券は必ず予定通りに、あるいは繰り上げて償還すると事業の譲渡を受けた会社が約束すればすむ話である。

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