映画『100,000年後の安全』、本日21時よりニコ生で有料配信“フクシマ後”の日本人、必見

» 2011年05月13日 17時30分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]

 福島第一原発の事故以来、原子力発電所に対する日本人の関心は飛躍的に高まっている。チェルノブイリ、スリーマイル島といった過去の原発事故をもちろん知っている人でも、自分が住む国で事故が起こり、現実的に日々現在進行形で放射性物質が漏れ続けているとなれば、気になるのは当然だ。

 中立的な知識を得るために、映画やテレビで原発をテーマにしたドキュメンタリーを見たいと考える人も多いだろう。しかし現実には、これがなかなか難しい。原発がテーマのドキュメンタリー(特に映画)は原発反対派が作っていることが多く、先入観なしに見ることが困難だからだ。

 原発反対の人も、原発推進派も、どちらも興味深く見られる原発映画はないか――そんな期待に応えてくれるのが、映画『100,000年後の安全』である。

 もともと日本では2011年秋の公開予定だったが、福島第一原発の事故を受けて公開予定を4月に繰り上げた。現在もいくつかの映画館で上映中だが、まだ見られる場所は限定されている。

 本作品が、今日(5月13日)ニコニコ生放送で有料生配信される。開場は20時半から、開演は21時から。販売価格は1600ポイント(1600円)、配信は1日限りだが、14日まではタイムシフト視聴が可能だ。

 →【ニコニコシアター】映画『100,000年後の安全』特別有料生配信 (番組ID:lv48994804)

テーマは原発が生み出す放射性廃棄物

 『100,000年後の安全』のテーマは、原子力発電所そのものではなく、そこから生まれる廃棄物と、その処理問題だ。原子力発電所で電気を作ると、必ずゴミとして高レベル放射性廃棄物が生まれる。このゴミが生物に無害になるまでは、10万年(!)もの時間を要するという。

 「この危険なゴミをどうするか?」は、世界中の原子力発電所に共通する問題だが、高レベル放射性廃棄物の最終処分場の建設に世界で初めて着手したのがフィンランドだ。固い岩をくりぬき「オンカロ」という地下都市のような永久地層処理場を建設。22世紀に放射性廃棄物でいっぱいになったらオンカロを完全封鎖するという。

 『100,000年後の安全』は、このオンカロを美しい映像で詳しく紹介していくドキュメンタリーだ。施設で働く人たち、原子力の専門家などが代わる代わる登場し、観客は原子力発電所についての知識を自然に得ることができる。

(出典:映画『100,000年後の安全』公式サイト)

 ストーリーが進む中で、観客は盲点のような難問を突きつけられる。それは、「オンカロが危険な施設であるということを、どうやって10万年後まで我々の子孫に伝えるか?」という、ある意味哲学的な問いだ。10万年といえば、これまでの人類の歴史よりも長い時間だ。今の言語は使われていないだろう。絵なら通じるのだろうか。「近寄るな」と書いたら、何かお宝があると思って、返って掘り返したくならないだろうか?

 注意深く見ていけば、映画の語り部であるマイケル・マドセン監督が原発に批判的なことは分かるだろう。しかし『100,000年後の安全』は、原発推進派も反対派も学ぶところが多い希有な映画だ。

 公開する映画館が限られている本作品を、自宅で見られる貴重な機会。今日時間が合う方はぜひ、ニコニコ生放送でこの映画を見てみてほしい。

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