連載
» 2011年05月12日 08時00分 UPDATE

郷好文の“うふふ”マーケティング:省エネ高級扇風機が生んだ、消費者の“必要”という風 (2/3)

[郷好文,Business Media 誠]

自分が欲しいだけでは売れなかった

 バルミューダがスタートしたのは2003年のこと。

 「最初に開発したのはX-Base、それからFloater、Liftでした」

 X-BaseはG4以降のMacBookなどのノートPCを冷却する台、FloaterやLiftはノートPC用のスタンド。いずれもアルミ削り出しの高品質商品、価格は3万円超である。そして他社に先駆けて2004年、省エネ型のLEDデスクライトHighwireを6万3000円で売り出し、2007年にはデスクライトAirlineを8万4000円という高価格で販売した。

 「正直言ってハイエンドの商品はあまり売れませんでした」

 寺尾さんは率直に語る。「世界一かっこいいメーカーを作ろう」という創業時の思い通り、デザインにも機能にも優れた製品を開発した。ネジ部品1つに至るまで図面を引き、工場に渡した後も生産現場で汗を流した。部品の磨きや削りの作業もした。決して大きくないオフィスで、設計や販売管理だけでなく、組み立てから出荷、アフターサービスまでこなした。「自分たちで作る」という妥協しない姿勢を貫いた。

ah_DSC09124S.jpg バルミューダの寺尾玄社長

 「自分たちで経験したことがないものはダメなんです」

 寺尾さんは「デザインだけして図面も引かずに丸投げするデザインブランドや、外見はカッコいいけれど中身は型落ちのデザイン家電メーカーとは違う」と言い切る。だが、何年経っても、バルミューダには売れる商品が生まれなかった。

 「『メーカーとして食っていきたい。どうすればいいのか?』と必死で考えたら、『必要じゃないから』と思い当たったんです」

 これまでは自分が作りたいものだけを作っていた。だが、3万円のノートPCスタンドも8万円のデスクライトも、世間では必要ない。企業の存続を考えると、“必要とされる”という視点を入れるべきだ。それで吹っ切れた。自分たちの作りたいものと必要とされることの接点に何があるのか?

「自分たちが作りたい」+「使う人の必要」

 大きな視点からユーザーの“必要”を見ると、社会的には地球温暖化と化石燃料の枯渇がテーマであった。数年、酷暑続きで燃料代も高騰しているので、絶対に省エネがテーマになる。省エネをテーマに冷と暖の分野で技術革新をしよう。そう軸足が定まった。

 するとハイエンドの価格ゾーンにチャンスが見えた。洗濯機、冷蔵庫、掃除機……と、たいていの家電では普及価格帯のボリュームゾーンとハイエンド帯のボリュームゾーンが両立する。ところが扇風機にはハイエンド帯がすっぽり抜けていた。このゾーンならバルミューダのこだわりも実現できる。ここに商品を打ち出そう。

 GreenFanの二重の羽根に例えると、外側の羽根は大きな消費テーマで、内側の羽根は商品自体の魅力。その2つが重なった時に“真の必要”が生まれる。

1.世の中の変化を見る

2.必要とされていることをする

 成功するためには、この2つの法則のクリアが不可欠。自社が取り組む商品ジャンルで「真に必要とされること」をどこまで考え抜くことができるか。売れないものは、1枚皮をはがすと、本当には必要とされていないのだ。

 GreenFanは2段ファンという技術革新と、“買われるハイエンド”を実現するため、同社初の海外生産委託をした。その結果、「3万円の扇風機は売れない、売れるならパナソニックが作っているはず」と言った家電関係者の常識を裏切り、ヒットした。買われる必要がそこにあったからだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

職種特集

注目のテーマ

マーケット解説

- PR -

Digital Business Days

- PR -