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» 2011年05月12日 08時00分 UPDATE

郷好文の“うふふ”マーケティング:省エネ高級扇風機が生んだ、消費者の“必要”という風 (1/3)

3万円以上という扇風機では常識外れの値段でありながら、1万台以上を販売している商品がある。その名前は『GreenFan』。省エネ性能とデザインにこだわったGreenFan開発の裏側を開発元のバルミューダ社長、寺尾玄さんに尋ねた。

[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など、印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載中。中小企業診断士。ブログ「cotobike


 今夏のテーマはズバリ“節電”。

 東京電力や東北電力管内で予想される電力不足に対応して、経団連では25%の節電目標を掲げる。政府・電力需給問題対策プロジェクトチームは、一般家庭でも15%の節電を呼びかける。そこで節電ビズや緑のカーテン※などが話題になっている。

※緑のカーテン……植物を建築物の外側に生育させることで、建築物の温度上昇抑制を図る省エネルギー手法。

 こんな環境になる前から、“超省エネ”扇風機をヒットさせていたメーカーがある。それは革新的なデザインと独創的なエンジニアリングが結合したGreenFan2という商品だ。

ah_greenfan201.jpg GreenFan2

 消費電力はわずか3ワット。一般的な扇風機は弱運転時でも30ワットだから、10分の1だ。開発元によると、最弱運転で1日8時間運転の場合、GreenFan2の電気代は1カ月16円になるという。東電管内で使うと仮定して、具体的に電気代を計算してみよう。

  • 消費電力30ワットの扇風機を8時間

 0.03キロワット×8(時間)×23(円/キロワットアワー)=5.52円(30日稼働で166円)

  • 消費電力3ワットの扇風機を8時間

 0.003キロワット×8(時間)×23(円/キロワットアワー)=0.552円(30日稼働で16円)

 たかが月150円、7キロワットの省エネではある。平均的な家庭の電気代8000円、電力消費量300キロワットの2%に過ぎない。平時なら“たかが”だが、今年の2%には意味がある。もちろんもっと強風で長時間運転していたと考えると、削減率は3%にも4%にもなる。

 GreenFan2と緑のカーテンでクーラー使用を半減させれば、さらに大きな節電も可能だ。開発元のバルミューダ社長、寺尾玄さんは言う。

 「成功するもの作りとは最初の商品企画で“これだね!”があることです」

 GreenFan2の“これだね!”は節電だけではなく、エアフロー(空気の流れ)にもある。独特の大小二重の羽根を備え、心地良い自然の風を面で作るのだ。二重の羽根の形状の違いから生み出される風速差で負圧状態を作り、外側の風を絞り込んで内側の風とぶつける。こうすることで大きく拡散し、部屋全体に涼風を送り出せるのだ。

 もちろん、冷気循環を活発にするサーキュレーターにもなるし、従来の扇風機にはないシンプルで美しいデザインも魅力の1つだ。

ah_dualfan.jpg GreenFan2の二重の羽根

 「3万円もする扇風機は売れない」――常識ではそうだ。だが、2010年モデルは1万2000台を売り切った。「1ロット3000台売れれば上出来」と言われるデザイン家電業界では異例のヒット。“これだね!”が広まり、販路も拡大した今年は2万台以上の出荷を計画。中国の偽造メーカーに真似され、日本のT社からも類似デザイン品が半額で売られるのは先駆者の勲章とも言える。

 なぜ、どんぴしゃりのタイミングで開発できていたのか? なぜ、3万4800円でも売れるのか? バルミューダのGreenFan開発への道のりから、ベンチャー企業の成功に不可欠な“普遍的な法則”が見えてきた。

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