奇妙な鉄の棒の正体は? 被災地で見たもの相場英雄の時事日想・震災ルポ(4)(2/4 ページ)

» 2011年05月12日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]
雄勝町公民館の屋根に乗り上げたバス

 道路は自衛隊が二車線を確保してくれたおかげで、普通に通行が可能だった。ただ、周囲の光景は異様としか言い様のない状態だった。

 台風の被害で崩れた街並を目にしたことはあった。筆者の地元、新潟県三条市が水害に遭遇したあと、故郷の変わり果てた姿もつぶさにみた。二度に渡る中越地震の惨状も知っている。だが、眼前に広がる光景は、今まで筆者が一度も目にしたことのない景色だった。

 鉄筋がなぜ不自然な形で折れ曲がるのか? どうして高い木の枝に漁具がブラ下がっているのか? 小学校の3階にがれきが突き刺さっているのはどのような力が作用したのか? 公民館の屋根に大型バスが乗り上げるには、どの程度のエネルギーが要るのか?

 同地区を歩いている途中、奇妙な鉄の棒を頻繁に見かけた。地面から伸び、折れ曲がっている棒の正体は何か。しばらく歩くうち、答えを見つけた。鉄の棒にコンクリート片がまとわりついている物体を目にしたからだ。正体は津波によってコンクリートがはがれ落ちてしまった電柱だった。

 雄勝の中心部は深い入り江の奥にあり、周囲を険しい崖や山に囲まれている。リヤス式海岸の奥深くに押し寄せた津波は、谷間の町にあらん限りの暴力を振るって去った。

雄勝町。かつて電柱だった物体

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