真面目な性格が裏目に? 原発事故を振り返るちきりん×城繁幸の会社をちゃかす(2)(2/3 ページ)

» 2011年05月11日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

NHKは外国メディアっぽく

城:メディアの対応はあまり意識してこなかったのですが、ちきりんさんはどのように感じましたか?

ちきりん:原発事故が始まってからNHKは外国メディアっぽくなりましたね。これまでのNHKであれば大事件があると亡くなられた方の名前と年齢を、延々画面に映し出していました。地震と津波だけだったら、今回もそればっかりやっていたんじゃないでしょうか。外国メディアのすべてを知っているわけではないですが、他国の主なメディアがテロや大災害の時に亡くなった自国民の名前を延々と長時間報道しているのは見たことがないです。

 原発事故がなければ、NHKは今回もそうだったんじゃないかな。ところが原発事故は現在進行形で進んでいて、首都圏の人にも影響を及ぼしているので、報道する優先順位が高い。しかも内容が難しいので専門家の解説が必要で、NHKはここの部分にかなり注力しています。こういうスタイルは外国では当たり前で、NHKはようやくまともになってきたかなと感じました。

 あと、原発事故が起きてから「海外メディアの報道と日本のメディアの報道が違う。これはなぜなのか」的な論調が起こっています。でも震災前も海外メディアと日本のメディアは全く違うことを報道してきました。別に震災後いきなり違ってきたわけではありません。

 例えば震災前には海外ではウィキィリークスの問題を報道していたのに、日本は海老蔵さんが麻布で殴られた話を熱く報道していましたから。震災後は海外メディアも日本メディアも「フクシマ原発」について報道しています。震災後、海外と日本のメディアは報道内容が似通ってきたというほうがむしろ正しいです。

城:僕は震災報道を通じて、伝統的なメディアの威力を感じましたね。Twitterなどソーシャルメディアを見ていても、情報が玉石混交としている。情報のブレが大きすぎて、見ていると疲れてしまう。

 伝統的なメディアは保守的かもしれませんが、ある程度裏のとれたことしか報道しない。なので大きなメディアが伝えてくれると、安心する面がある。ただ安心できる半面、まだ悪い情報が出ていないのではないかと疑ってしまう。その隠しているのではないかという部分を、インターネットが補完している。一部のジャーナリストが「もっと本当はヒドイんですよ」「東京電力は隠しているんですよ」などと書いていたりする。

ちきりん:インターネットってデマが多いという人がいますが、私は思ったより少ないなあと感じました。デマやあおったりする人がいて、もっとぐちゃぐちゃになるのかなと思っていたのですが、デマが出ると「あれはデマだ」という人がすぐに現れる。デマの一覧を作ったりする人もいる。こっちの情報もあるけど、反対方向からの情報もある――という動きがものすごく速いですね。

城:インターネットの世界は玉石混交ですが、玉石混交がゆえにそれを信じてパニックになる人が少ないかもしれません。

ちきりん:そうですね。水やラーメンを買い占めている人はネットを見ているのではなく、隣のおばちゃんが「あなた水買った〜!?」とわざわざ家にくるんですよ(笑)。そして「え、どうしたの?」と聞くと「知らないの? スーパーでモノがなくなっていて大変なのよ」と言ってあせらせる。。ネットには関係のないところで、口コミでパニックが生まれているケースも多いように思います。

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