まとめると、じゃがりこは競合企業に挑戦した事例ではなく、新しい市場の創造にチャレンジした事例と言える。袋スナック菓子市場が縮小する中、自社内のリソースを活用した新市場の創造に挑んだのである。
新市場を創造するためには「過去の成功体験を排除すること」「プロジェクトメンバーに権限を委譲すること」が必要不可欠。この2点が不十分だと社内のほかの勢力に負けてしまい、「疲れた……」と愚痴をこぼして撤退することになってしまいがちだ。
カルビーでは役員会の承認を背景にした、若手中心のプロジェクトメンバーを組織して開発に挑戦。過去の成功体験がないメンバーだったからこそ、徹底的に消費者ニーズを調査し、調査結果から消費者が求めている商品を考えられたのだろう。
じゃがりこの当初のメインターゲットは女子高生だったが、パーソナルユース性や携帯性の高さ、売り場展開の容易さがポイントとなったことから、そのほかの消費者にも受け入れられ、コンビニに不可欠な商品となった。この成功によりカルビーは箱スナック菓子市場の先行者メリットを享受、じゃがりこブランドは高位置に定着することとなったのである。
JR東日本リテールネット・コンビニエンス営業部長。ゼネコン、コンビニチェーン本部、コンサルティング会社を経て現職。小売業・サービス業を中心に多店舗展開チェーン(特に駅ナカ・空港等の限定商圏マーケティング)を中心に活動。NEWDAYSが2007年度から3年連続で1店舗平均日商でセブン-イレブンを抜いた実績のサポートを行う。月刊コンビニ(商業界)での執筆、海外メディア「Financial Times」等取材実績多数。著書に『コンビニのしくみ』(同文館出版)や『よくわかるこれからのスーパーバイザー』(どちらも同文館出版)がある。経営相談・講演・執筆等の依頼はこちら(kiyoshi1025@gmail.com)まで。
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