消費者ニーズを徹底分析、定番商品化した「じゃがりこ」コンビニ、ヒット商品の理由(1/2 ページ)

» 2011年05月10日 08時00分 公開
[笠井清志,Business Media 誠]

「コンビニ、ヒット商品の理由」とは?:

限られた売り場を最大限に活用して、面積当たりの売り上げを高めているコンビニ。約100種類の新商品が毎週発売されているが、売れない商品は発売から2週間ほどで撤去されてしまう。厳しい審判をくぐり抜け、コンビニでヒットしているのはどんな商品なのか。一般には「おいしい商品」「お得な商品」「テレビCMが放映されている商品」が売れると思われがちだが、実は重要なのは「店頭展開」。このコラムでは、コンビニのヒット商品を展開方法の観点から分析していく。


 マイボイスコムの調査によると、スナック菓子の中でポテトチップスに次ぐ人気を誇るのが、カルビーの「じゃがりこ」だ。歴史の長いポテトチップスに比べて、近年人気を獲得してきたじゃがりこ。どのようにして定番商品となるに至ったのだろうか。

じゃがりこ(出典:カルビー)

若いメンバーが開発を担当

 カルビーは1992年に中期五カ年を初めて立てたのだが、その中に「商品製作」というテーマがあった。当時、スナック菓子は“ピロー”と呼ばれる袋形が定番で、屋外で食べるのに適した容器はなかった。そこで、そのニーズに目を付けて開発が始まったのがじゃがりこである。

 新商品開発という言葉自体はありふれているものの、実際に行おうとすると大きなコストと労力がかかるもの。しかし、カルビーの経営陣が「スナック菓子市場は成熟期に近付いている」と認識していたことが、開発コストが高い商品開発へのチャレンジにつながったのだという。

 新商品のターゲットにしたのは子ども。世の少子化の流れと逆行するようではあるが、定番商品ということで大人になってからも食べてもらうことを想定した。また、コンビニチャネルは男性客が多いのだが、メインターゲットは10〜20代の女性、特に女子高生と定めた。

 じゃがりこの開発に当たったのは若いメンバーたち。彼らは「どんな商品が受け入れられるのか」という仮説を構築し、それを消費者のグループインタビューの中で何度も確認するという作業を繰り返した。これによって、「どこに商品の価値を置くのか?」が明確になったという。

 こうして1995年に完成したじゃがりこ。「パウダーがそれほどかかっていないため、手が汚れにくい」「携帯性に優れたカップ入りのスティック型スナックで食べやすい」という2点が従来のスナック菓子と大きく異なり、他社との差別化要因になったと分析できる。また、生のじゃがいもを使用するなど、原料にこだわった商品開発を意識したことも他社との差別化につながったと言えるだろう。

 そしてPR面では、コアな消費者と関係を持ち続けるための工夫をいくつか行っている。

 1つ目はCMにも登場するキリンのキャラクター。ユーモラスな雰囲気のキャラクターで、消費者にインパクトを与えることを意識しているという。

キリンのキャラクター(出典:カルビー)

 2つ目はバーコードを絵柄として表現するデザインバーコード。コアな消費者にブログなどで取り上げてもらうといった狙いがある。

デザインバーコード。上が胴上げ編、下が銅像編(出典:カルビー)

 3つ目は「それいけ! じゃがり校」というWebサイト。毎年2月〜3月に入学試験を実施し、合格者だけが会員になれる。Webサイトでは、“朝礼”と題してファンに直接質問することで、商品の感想や商品開発にあたっての消費者の生の声を集められるようになっている。

それいけ! じゃがり校(出典:カルビー)

 カルビーでは末長く受け入れられる定番商品となるように、「基本をぶらさない姿勢」「消費者を大切にする姿勢」を重視。消費者からの手紙に対しては、手書きの返事を送ることをインターネット時代の現在でも続けているという。

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