原子力発電所停止の影響を懸念して軟調清水洋介の「日々是相場」夕刊(2/2 ページ)

» 2011年05月09日 16時06分 公開
[清水洋介,Business Media 誠]
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明日の相場雑感

 総理大臣の唐突とも思われる原子力発電所停止要請が波乱要因となり、先週末の米国市場が堅調、為替も落ち着いていたにも関わらず軟調となりました。企業決算の発表に反応するというよりは原子力発電所停止を嫌気する動きから、買い戻しの入る銘柄もあり底堅さも見られたのですが、寄り付きの買いが一巡となった後は冴えない展開となりました。電力供給は数字の上では心配はないとされるものの、火力発電の再開などコスト増要因や環境の問題などもあり、相場では嫌気する動きとなりました。

 本来であれば、突然原子力発電所停止を要請する前に経済界などでの根回しや代替電力のめどをたてたうえで「心配ないから」と言うことで要請をするものではないかと思います。原子力発電所に対する不安を政府が煽ってどうするのか?と直接の関係者でないのですが、政府に対する不信がますます募るのは自分だけでしょうか?実際に原子力発電所のCO2(二酸化炭素)排出量の少なさや発電コストなどを評価して原子力推進ともとれるような政府の方向を転換したのであればはっきりと転換したと言うべきではないかと思います。

 株式市場では代替エネルギーに期待する動きがすでに見られていましたが、さらに原子力発電からの代替が注目されることになりそうです。同時に、電力供給を電力会社に頼るのではなく、自前で賄うような動きも今後はどんどん出てくるのだと思います。各家庭でもLED(発行ダイオード)照明に代表されるような「節電」や太陽光発電や燃料電池を設置するような動きも今後は進んで見られるのだと思います。

 以前「スマートグリッド関連」について述べた時に、電気を「作る」「貯める」「運ぶ」「使う」と言う4つのところを効率的にできるものの需要が膨らむでしょうと言う話をしましたが、まさにその動き、流れが切迫したものとして取りざたされているのだと思います。エネルギー効率を考えれば、天然ガス発電所で発電をして各家庭に配するよりも、各家庭で燃料電池などを利用して発電する方が効率が良いわけで、電力不足から燃料電池が一気に普及することで導入コストが下がればさらに需要が増大するのではないかと思います。原子炉を止めるだけでなく、代替のコストダウンなどの政策=補助金の増額などが待たれるところです。

清水洋介氏のプロフィール

慶應義塾大学法学部卒。1983年に大和證券に入社、以来、マネックス証券、リテラ・クレア証券で相場情報などに携わってきた。営業やディーラーの経験を基に、より実戦に近い形でのテクニカル分析、市場分析に精通している。日本証券アナリスト協会検定会員、日本テクニカル協会会員。著書に『江戸の賢人に学ぶ相場の「極意」 』 (パンローリング)、『儲かる株価チャート集中セミナー』(ナツメ社)。清水洋介の「株式投資の羅針盤


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