コラム
» 2011年05月02日 08時00分 UPDATE

ソーシャルでの不評を挽回できるか? ウォルマート、最後の一手 (1/2)

国内店舗の売り上げが2年連続で減少と、不調にあえぐウォルマート。起死回生を賭け、ソーシャル・メディアのスタートアップ企業であるコズミックスを買収し、「店舗+Web+モバイル」の戦略に乗り出した。

[石塚しのぶ,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:石塚しのぶ

ダイナ・サーチ、インク代表取締役。1972年南カリフォルニア大学修士課程卒業。米国企業で職歴を積んだ後、1982年にダイナ・サーチ、インクを設立。以来、ロサンゼルスを拠点に、日米間ビジネスのコンサルティング業に従事している。著書に「『顧客』の時代がやってきた!『売れる仕組み』に革命が起きる(インプレス・コミュニケーションズ)」がある。


 先日、世界最大の小売業者、ウォルマートが、ソーシャル・メディアのスタートアップ企業であるコズミックス(Kozmix)を買収したというニュースがありました。

 コズミックスは、TwitterやFacebookなどのソーシャル・メディアの中から、トピック別に情報をフィルタリングかつ整理整頓して提示してくれるWebサイト。Kosmix.comはまるで検索エンジンのように働くのだが、Webサイト上部に表示されるボックスにキーワードを入れると(ここではWalmartと入れてみた)、記事、リファレンス、ビデオ、ニュース、ブログ、ガイド、フォーラム、ツール、Facebook、Twitterなどのセクションに分かれて、ウォルマートに関するありとあらゆる情報が提示されます。

 Walmart.comのビジター数トレンドから、先日発表された配当金増加のニュース、元従業員の声、給与情報に至るまで……なるほど「ウォルマートについての最新情報」を把握するにはもってこいのサイトです。私も仕事がらよくWebサイトでリサーチしますが、市場や世間の人が「今」ウォルマートについて何を言っているのか、このWebサイトを見ればよく分かります。

 とても便利なサイトであることは間違いないですが、「コズミックス買収の背景にあるウォルマートの具体的な意図は?」というと、あまり明確に説明されていません。

 「今日、急速に成長しているソーシャル・コマース環境において、我々の能力を拡大していくことを視野に入れている。世界的に見ても、ソーシャル・ネットワーキングやモバイル・アプリケーションは顧客の日常生活の一部になりつつあり、ショッピングについての考えや姿勢を影響するものとなっている」というのが、買収に際して、ウォルマートの副会長エデゥアルド・カストロ・ライト氏が出した声明です。

 コズミックスの共同創設者であるベンキー・ハリナラヤン氏とアナンド・ラジャラマン氏は、シリコンバレーでは有名なシリアル・アントレプレナー(連続起業家)です。1998年にアマゾンに2億5000万ドルで買収されたショッピング・サーチ・エンジン、ジャングリーも彼らのクリエイション。その後、両者はアマゾン社内で人的タスクのクラウドソーシング・マーケットプレイス「メカニカル・ターク」(翻訳、文章の書き起こしなどの仕事に関して、依頼者と遂行者を結び付けるマーケットプレイス)の開発に携わるなど華々しい経歴を持っています。

 アマゾンの創設者でありCEOのジェフ・ベゾスも、実は個人投資家としてコズミックスに出資しており、ハリナラヤン/ラジャラマン両氏の才能と、同サイトの潜在性を高く買っていることは想像に難くありません。

 北米店舗売上が過去2年連続で減少し続けているウォルマートは、不調の原因の1つである「主要顧客層の声を無視し、その支持を失った」ことで批判を浴びています。「エブリデイ・ロウ・プライス」を売りにナンバー・ワンの地位を築いてきたのにも関わらず、最近では、アマゾンにその地位を奪われる始末。長年、ウォルマートを頼りにしてきた顧客層の期待を大きく裏切ったというわけです。

 ソーシャル・メディア上の評判も芳しくなく、つい最近では「ソーシャル・メディア上で最も嫌われている大型ストア」という不名誉な発表もありました。これは、米国のオンライン世論集積サイトによるものですが、過去3カ月間に、Twitter、Facebook、そして同サイト上でウォルマートに関して流された不評(筆者注:英語のみと思われる)はおよそ1万件。なかでも、「労働条件、低賃金、粗悪な商品、粗悪なカスタマー・サービス」に意見が集中したということです。

 一般庶民がコンテンツ制作から発信、共有、そして共通の関心や主張を軸とした組織化まで、自由自在にできるようになった世の中。「世界最大の小売業者」として権力を欲しいままにしてきたウォルマートですが、市場の大きな変化を見すえ、生活者の声に耳を傾ける必要に迫られるようになっています。

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