第47鉄 災害と復興と洋菓子――2008年夏、柏崎杉山淳一の+R Style(3/6 ページ)

» 2011年04月25日 10時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

 私はアクアパークに戻り、傍らの広場のベンチで駅弁を開けた。「牛肉まいたけ釜めし もぉ〜舞っちゃう」という楽しいパッケージだ。買う時は気づかなかったけど、加熱機能が付いている。温めたほうが旨かろうとひもを引っ張ると、炊きたてのように熱くなる。汗を拭きつつ、暑い中で熱い釜めし弁当を食べる。もうフラフラである。食べ終わり、涼を求め再び歩き、公園のそばにある公民館に入った。1階は児童館のようで子どもが遊んでいる。それを見守る母親たち。なんか場違いなところに来ちゃったな、と思いながら冷房を浴び、自販機で冷たいお茶を買う。

長岡の駅弁「牛肉まいたけ釜めし もぉ〜舞っちゃう」。新潟産牛と雪国まいたけのコラボ、もちろんご飯は新潟コシヒカリ

復興にこれほど時間がかかるとは……

 この建物にはコミュニティバスが立ち寄るようで、遠回りだが駅も経由する。暑さと海の見えない落胆で疲れたので、帰りは地元のお年寄りに混じってバスに乗った。静かな街並み。地味な市役所の建物も見えた。

 そういえば柏崎は原子力発電所があって、地震の影響で停止していた。この夏、東京電力はコマーシャルで節電を呼びかけていた。原発の町は補助金など優遇されていると聞くから、もっと豪華な市庁舎だと思っていたのに、ずいぶんつつましいんだなと思う。アクアパークや公民館のほうにお金を使っているのかな……旅人の勝手な感想である。バスは道路工事の交通整理で何度も停まった。この町の名物は道路工事かと思うほどだった。

 公園は立ち入り禁止、アクアパークは改装中、道路は工事だらけ。妙な町だと思ったけれど、その感想は私の無知によるものだ。駅に戻り、観光案内所で話を聞くと、なんと、この町はまだ復興の最中だという。公園の海沿いは液状化と地盤沈下で再生工事中、アクアパークは自慢の大型プールが割れて水漏れ、道路もヒビだらけ。地震から1年、まだ再生が終わっていない。災害からの復興はたやすいものではないのだ。町を俯瞰しただけでもこの様子なのだから、きっと生活する人々はまだまだ不便な思いをしているのだろう。ぶらりと訪れただけで不満を感じた自分が恥ずかしくなった。

 肩を落としつつ、待合室で列車を待つ。ガラスケースに柏崎の特産品が並んでいた。そのなかで、見慣れた商品を見つけた。ブルボンのお菓子たちだ。コンビニの定番のプチシリーズ、私が好きなアルフォート……へぇ、ブルボンって柏崎の会社だったのか。そういえば東京で銭湯を営む祖父母は新潟出身で、遊びに行くといつも柿の種とブルボンのルマンドがあった。祖父母は甘いものを食べなくて、私は子どもの頃からルマンドを食べ散らかしていた。なるほど、あれは祖父母の新潟への思いがこもっていたんだな。

柏崎駅の特産品紹介コーナーにブルボンのお菓子が並んでいた

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