コラム
» 2011年04月25日 08時00分 UPDATE

藤田正美の時事日想:“欲張り”総理に、欠けているもの (1/2)

日本の財政問題は危機的な状況にある、と言っていいだろう。基礎的財政収支は歳出を10%カットし、消費税を10%上げて、ようやくとんとん。このほかにも社会保障関連費用が毎年1兆円ほどかかるが、民主党に打つ手はあるのだろうか。

[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 参議院予算委員会の集中審議。菅直人首相は震災対策が一段落したところで辞任したらと迫られてこう答えた。「震災からの復興も財政再建も道筋をつけたい。それができれば政治家として本望だ」

 細川護煕元首相は、あるインタビューの中で「首相として1つのことを成し遂げたら辞めるぐらいの覚悟がなくてはいけない」と語っていた。そして「菅首相にその覚悟があるだろうか」と問うた。まさに菅首相が「財政再建まで」と言ったのは本人も自覚されているとおり「欲張り」である。

やるべきことは分かっている

 国家の指導者として「震災復興」と「財政再建」は難易度が全く違うと思う。日本が第二次大戦に負けてがれきの山になっていたときも同じだが、それこそ国としての目標は見えていた。打ちひしがれている国民をどう鼓舞するのか、どこから手をつけるか。将来ビジョンをどう描くかという大問題はあったにせよ、日本を再建するという大きな目標は一致していた。

 東日本大震災も同じだと思う。甚大な被害であり、あまりにもたくさんの人が亡くなっている。しかしやるべきことは分かっている。二度と津波の被害を受けないようにしながら、故郷そして地場の産業を再建するということだ。財源をどうするのか、国と地方の分担をどうするのか、といった問題はあるとはいえ、政治的な思惑を絡めることがなければ与野党の協議もしやすいはずだ。

 それに比べると、財政再建は「道筋」をつけることだけでも大変である。本来ならば、民主党政権はこの2011年度予算では財政再建への道筋を示すべきであった。なぜなら20年度でのPB(プライマリーバランス、基礎的財政収支)を黒字化させるという目標を立てているからだ。黒字化ということは税収などで一般の政策経費を賄える状態にするということである。2009年度でのPB赤字は33兆円、2010年度もほぼ当初予算では23兆円ほどだが、補正予算も組んだため赤字額は27兆円ほどに達しているだろうと思われる。

yd_kan.jpg 菅直人首相

 これは大変な額だ。なにせ国の予算で基礎的財政収支の対象である歳出は71兆円ほどしかない。公務員の人件費を2割カットしても1兆円しか浮かないし、民主党が目の敵にした公共事業費も2011年度予算では5兆円。つまり公共事業をゼロにしても(実際には不可能だ)5兆円しか浮かないのである。

 もちろん歳出カットだけで財政再建できるとは誰も考えていない。みんなの党だけは「増税しなくても財政再建は可能」と主張しているが、他の政党は何らかの形での増税を主張する。候補にあがる消費税は、1%上げれば国税だけで約2兆円の増収。つまり10%上げて15%にすれば20兆円税収が増える計算である。歳出を10%カットして7兆円、消費税を10%上げて20兆円、それでようやく基礎的財政収支がとんとんになる。

 しかもこれには毎年1兆円増える社会保障関連費用などは計算に入っていない。そうなると、消費税を上げるほかに何をするのか。例えば所得税の累進税率を上げる(高額所得者の税率を上げる)とか、相続税をさらに厳しくするとか、いくつかの組み合わせはある。さらに政策経費のカットにしても社会保障費をどうするのか、それぞれの政党によって変わってくるはずだ。

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