残念+悲しい新聞の、悩ましい問題とは烏賀陽弘道×窪田順生の“残念な新聞”(9)(1/4 ページ)

» 2011年04月22日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 ジャーナリストの烏賀陽弘道さんと窪田順生さんによる対談連載「残念な新聞」もとうとう最終回。これまで新聞や記者のあり方などを中心に語り合ったが、最後にこの業界の今後を占ってもらった。残念な新聞を再生させるためにはどのような手を打つべきなのか。それとも手遅れなのか……。

事件を組み立てていく+記事を出す

烏賀陽弘道さん

烏賀陽:大阪地検特捜部元検事の前田恒彦容疑者がフロッピーディスクを改ざんした事件について。それをすっぱ抜いた朝日新聞の板橋洋佳記者はどうやって検事と仲良くなったのか。彼は「詰問するのではなく、家で検察の将来について悩みを聞き、意見を語り合った」と書いていた。彼の記事、記者としてのありようは賛否両論あると思いますが、その取材方法は正しいと思う。

 彼が偉いのは特ダネを秘匿しないで、新聞に書いたこと。フロッピーディスクの改ざんという検察の大不祥事を知ったとき、そのネタを世に出さないで取引に使う記者もいる。秘密として墓場まで持っていく記者も多いが、板橋記者はちゃんと書いた。そのことは高く評価しなければいけない。メディア、企業としての新聞はもう「残念な段階」かもしれないが、唯一の光といえば板橋記者のような記者の存在だと思う。

窪田:検察担当の優秀な記者に限って、検察と一緒に事件を組み立ててしまいますからね。検事に「この人、あげちゃったらどうですか?」と提案する記者もいる。

烏賀陽:ハハハ。

窪田:このクラスの記者になると「事件を組み立てていく+記事を出す」という流れで動いているので、他社の追随を許さないスクープ連発となるわけですよ。

 こうした記者の行動を「悪い」と言う人もいますが、僕は悪いとは思わない。これは記者として、検察というネタ元に食い込むひとつの手法に過ぎませんから。

 問題なのは、検察組織に食い込みすぎて、逆に利用されてしまうことでしょう。本来、ギブアンドテイクの世界であるべきなのに、捜査機関の1人として動いてはダメ。記者は権力を監視しなければいけないのに、そうした記者は権力側にいるようなもの。

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