原発産業は再考せざるをえず
レベル7への引き上げについて、13日付の米紙ニューヨーク・タイムズは、「日本の当局者は自分たちを守ろうとむきになっている」との記事を掲載し、日本政府の姿勢や情報発信のあり方を問題視。福島第1原発の事故が米国の原発産業に及ぼす影響は大きいとの立場を示している。
同紙はまず、「公式確認に1カ月もかかったことが、最大の驚きだ」とする米専門家の意見を紹介し、日本政府の対応の遅さを批判。菅直人首相の記者会見についても、「結局は事故に関する政府の情報管理について正当化するばかりだった」と厳しく指摘した。
さらに同紙は、「リスクがほとんどないのに外国人は逃げ出していた。(引き上げを急いでいたら)われわれがパニックの引き金を引いていたかもしれない」と会見で述べた内閣府原子力安全委員会の担当者の言葉を引き合いに出し、発表が遅れた理由には公共政策的な意味合いがあったのでは−と勘ぐりもしている。
オバマ米政権は輸入石油依存からの脱却を目指し、原発推進路線にかじを切っている。ただ、米国では1979年のスリーマイル島原発事故以降、長い年月をかけて原発の安全への信頼回復に努めてきた経緯がある。それだけに福島の事故は、32年前の記憶を呼び起こしかねない。実際、米国民の7割が国内での原子力災害を懸念しているとの調査結果も出ている。
こうしたなか、原発推進に慎重な姿勢を取る同紙は、米原子力規制委員会(NRC)のヤツコ委員長による「福島第1原発はまだ安定するには至っていない」などの議会証言を取り上げ、米国内の原発の危険性についても憂慮。「原発産業は再考せざるをえない」との専門家の見解を紹介している。(ワシントン 柿内公輔)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング