窪田:記者クラブにいれば、役人から「ちょっと飲みに行きませんか?」という話になったりする。そして酒の席で「このネタは朝日さんに書いてもらいたいから」と言って、情報を教えてくれたりする。特に地方支局ではこうしたことが多い。要するに「ネタ」を食わせられるんです。
烏賀陽:「中日新聞では無理ですから朝日さんに」とかね(笑)。
窪田:「中日新聞ではなく、私は全国紙である朝日に書いてもらいたいんですよねえ」とか(笑)。若いうちからこうした経験してしまうと「自分のところに情報が集まってくる」という勘違いで凝り固まってしまう。権力側は「朝日」や「読売」というブランドを利用して情報を流そうとしているだけなのに。
ブランドで思い出しましたが、先日、大企業の広報担当者から「ブラックジャーナリストが来た」という連絡があったんですよ。よくよく話を聞いてみると、担当者はそのジャーナリストのことを知らなかったので「取材趣旨と質問内容を送ってほしい」とお願いしたそうです。
烏賀陽:当たり前のことですよね。
窪田:しかしそのジャーナリストは電話口で「テーマは○○だ」などと話し始めたそうで。担当者は「質問項目はファックスで送ってくれませんか?」とお願いしたところ、「そんな無礼なことを言われたのは初めてだ」と怒ったそうです。
そのジャーナリストの名前を聞いて調べたところ、つい最近に退社されてフリーになった某全国紙のベテラン記者でした。これは想像ですが、全国紙で記者をしていたころは、名刺1枚あればどこでも取材できたはず。ところが今は単に「フリージャーナリスト」という不審人物(笑)。全国紙の記者というブランドが抜けきれてなかったんでしょう。
烏賀陽:うーむ。記者クラブ時代の癖が治っていないのかな。
窪田:企業側も、面識のないフリーライターが取材を申し込んでくれば、構えるのは当然だと思うんですよ。
烏賀陽:何が狙いかもよく分からないし。
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