放射性物質の“流れ”は公表できません――気象庁の見解は世界の“逆流”松田雅央の時事日想(1/3 ページ)

» 2011年04月19日 08時00分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

著者プロフィール:松田雅央(まつだまさひろ)

ドイツ・カールスルーエ市在住ジャーナリスト。東京都立大学工学研究科大学院修了後、1995年渡独。ドイツ及び欧州の環境活動やまちづくりをテーマに、執筆、講演、研究調査、視察コーディネートを行う。記事連載「EUレポート(日本経済研究所/月報)」、「環境・エネルギー先端レポート(ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社/月次ニュースレター)」、著書に「環境先進国ドイツの今」、「ドイツ・人が主役のまちづくり」など。ドイツ・ジャーナリスト協会(DJV)会員。公式サイト:「ドイツ環境情報のページ


 福島第1原発から大気中に放出された放射性物質がどのように拡散していくかシミュレーションしたデータを「放射性物質拡散シミュレーション」(以後、シミュレーション)と呼ぶ。前回はWEBサイト上でシミュレーションを開示しているドイツ気象局への電話インタビューをお伝えした。日本気象庁(以後、気象庁)も類似のデータを開示してはいるが、一般公開を前提としていないため、諸外国とは開示の姿勢と意味が根本的に異なる。

 今回は気象庁からの回答を中心に、シミュレーションの意味と情報開示のあり方について考えてみたい。なお、気象庁の資料はあくまでIAEA(国際原子力機関)提出用に作成した資料を情報公開の観点から開示しているもの。「市民向けに分かりやすい情報として開示しているわけではない」という意味で、ここでは「開示していない」と書くことにする。

 →放射性物質はどのように拡散するのか――情報開示に消極的な気象庁

各国の放射性物質拡散シミュレーション

 それぞれのシミュレーションは計算方法と意味が違うので、利用には注意が必要だ。

日本気象庁がIAEAの指定する放出条件に基づいて放射性物質の拡散を計算した資料。4月15日を基点として17日の拡散状況をシミュレーションしたもの(参照リンク)。気象庁がIAEA提出用に作成した資料で、一般公開を前提として作成されたものではない。同種資料は3月11日から継続して作成されていたが、4月4日に政府からの指令を受けて一般開示されるようになった(出典:気象庁)
ドイツ気象局(DWD)の放射性物質拡散シミュレーション。大気中に放出された放射性微粒子が、地上高250メートルをどのように拡散してゆくかシミュレーションしたもの。6色に分けされた濃度はあくまで相対的なもので具体的な濃度ではない。6時間毎に3日間をシミュレーションしている最新のシミュレーション(アニメ)はこちら(出典:DWD)
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