「遊びでもいいから本気でやってみろ」――高卒ロッククライマーから米国監査法人へ世界一周サムライバックパッカープロジェクト(1/3 ページ)

» 2011年04月19日 08時00分 公開
[太田英基,世界一周サムライバックパッカープロジェクト]
世界一周サムライバックパッカープロジェクト

太田英基(おおた・ひでき)

世界一周中のバックパッカー。4月12日現在、エジプト滞在中。1年半で40カ国以上の訪問を予定。若者の外向き志向の底上げのため、海外で働く日本人を訪問したり、旅の中で気付いたことや発見したことをWeb中心に情報発信しながら旅をしている(サムライバックパッカープロジェクト)。学生時代に広告サービス「タダコピ」を立ち上げた元起業家でもあり、根っからの企画屋。Twitterアカウント「@mohideki」では旅の様子をリアルタイムに発信している。

 →目指せ世界一周!「サムライバックパッカープロジェクト」とは?


 シリコンバレー滞在中、米国の大手監査法人Ernst&Youngに勤める安田敦史さん(31歳)にお会いしました。とても力強いパワーを持っている方で、「スーツを着こなしていて、バリッとしたビジネスマンだ!」という印象を持ったのですが、なんと以前、スポンサー企業との契約を持つロッククライマーとして大会などに出場して活躍されていたそうです。

 最初はそのギャップに驚きましたが、話をうかがうと、「やはりアスリートな方なんだ」と思わせられることが多々ありました。愚直に決めたことを貫き、挑戦を続けていく。そんな安田さんをご紹介します。

安田敦史さん

遊びでもいいから本気でやってみろ

――自己紹介とこれまでの歩みについて教えてください。

安田 19歳の時、バックパック1つで1年のオープンチケットを手に米国に来ました。

 当初の渡米目的は北カリフォルニアにあるヨセミテ国立公園でロッククライミングをすることだったので、米国に滞在するための学生ビザを取るため、近くの短大へ通い始めました。

 金色の長い髪、顔面ピアスを入れていた私の周りには、勉強がしたくて海外へ来た人や自分の趣味のために海外まで来た人はいませんでしたが、世界中からヨセミテへ訪れるクライマーや、同じ短大に通う日本人留学生に関わる機会ができて、新鮮な影響を受けました。

 私の自己紹介をする上で、ロッククライミングの話をするのが一番分かりやすいと思うので少し触れます。“登る”というこの単純明快なスポーツのおかげで、今まで感じていた不公平な人生や、過ごしてきた社会がとても単純に感じられるようになりました。

 世界には背が高い人や低い人、賢い人や筋肉質な人、体が柔らかい人、体重の軽い人、さまざまな人がいます。登れる・登れないは、その人の持っている素質や才能、運に左右されますが、「登る挑戦をする上では人は平等なんだ」と学びました。

 ロッククライミングを始める前、「私は社会において不幸せな境遇にいる」と勝手に決め付けていました。人は社会において平等とは言えません。お金がないと学校へ行けないですし、若いころに馬鹿だと決めつけられた私の成績表は、将来の可能性をしっかりと否定してくれていましたしね。

 そのころに私が出会った、カッコイイと思う大人たちは口をそろえて、「遊びでもいいから何でも本気でやってみなさい。自分の中で納得がいくよ」と言ってくれました。そこで、19歳から26歳の間は、食生活を始め、体調管理、トレーニングなど、ロッククライミングのためだけの生活をしていました。

 ヨセミテで登るために学校には通っていました。しかし、27歳ごろから社会に対しても挑戦したくなり、私は会計学が将来性や柔軟性のある知識だと感じていたので、大学の専攻をビジネス会計学科にして(本格的に)通い始めました。

 29歳で卒業し、ロッククライミングで学んだ挑戦する姿勢から、当時、Business Week「Best Place to Lunch a Career」ランキングの1位だったErnst&Youngに就職しました。

――Ernst&Youngでの仕事内容と、会社の魅力を教えてください。

安田 Ernst&Youngでは監査業務をしています。監査企業は日本企業に限らず、米国企業の監査も行っています。

 Ernst&Youngの魅力はたくさん感じています。シリコンバレーにロケーションしているので、世界のIT企業の動きが間近で感じられ、トップの方たちと仕事ができる機会も多く、新しいことを常に感じられる環境も魅力の1つですね。

 そして、Ernst&Youngは個人の意見やアイデアが非常に反映されやすい社風に特色があると思います。常にチームで働く環境にあり、チームリーダーやパートナーと直接話をする機会が非常に多く、小さなことでも自分が感じたことはすぐに話ができる環境にあり、個人個人がチームの一員だと自覚して仕事できると思います。

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