想定外そして想定外……東電は無責任すぎないか藤田正美の時事日想(2/3 ページ)

» 2011年04月18日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

最悪に備え、準備しなければいけない

 どんな組織であれ、想定外のことまで考えるというのは苦手であると思う。外国の会社とある交渉をした経験がある。先方の要求に応じる形で、かなりの譲歩案を先方に示した。この譲歩案を議論したとき「もしこの案を先方が蹴飛ばしたら、どうするか」という問題を提起した。その時に同僚は「いや絶対に先方はのみます」と言い張ったのである。

 議論したかったのは、先方が拒否するかどうかではない。拒否する可能性が残っている以上、拒否されたらどうするかというプランBが必要ではないかと言っただけだ。交渉に期限がある中では、予想外の展開になると不利な立場に追い込まれることが往々にしてあるからである。結局プランBを考えることはなかった。そして譲歩案は拒否され、さらに譲歩を迫られることになった。もちろんプランBを考えていればましな結果になったかどうか、それは分からない。しかし予想外の事態に直面してあたふたすることはなかっただろう。

 福島第1原発の事故の推移を見ていても、楽観的なシナリオと悲観的なシナリオ、さらには最悪のシナリオが首相官邸や東電、あるいは原子力安全・保安院などで描かれているのだろうか、と思えてしまう。最悪の場合、原子炉の冷却がうまく行かず、原子炉容器が爆発を起こして格納容器も破壊され、大量の放射性物質が広範囲に散らばる。それまで原子炉には延々と水が注入され、それが高濃度汚染水となって海にあふれ出す。それこそ誰かが漏らしたように人が何十年も住めなくなる可能性すらある。

 最悪のケースになる可能性が残されているのなら、それに備えた準備をしなければなるまい。避難地域をどこまで拡大しなければならないのか、その住民をどこに移動させるのか、住居はどうするのか、費用をどうするのか、人がいなくなった地域の防犯はどうするのか。やらなければならないシミュレーションはいっぱいあると思う。そしていかなる事態になっても政府は対応できるということを国民に示すことが必要である。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.