リクルート「就職人気企業ランキング」の公表取りやめを歓迎する(1/2 ページ)

» 2011年04月15日 08時00分 公開
[川口雅裕,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール

川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

イニシアチブ・パートナーズ代表。京都大学教育学部卒業後、1988年にリクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。2010年1月にイニシアチブ・パートナーズを設立。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ


 リクルートが今春から「大学生の就職志望企業ランキング」の公表を取りやめる方針を明らかにしたそうです。日経の記事によると、その理由は「学生の価値観の多様化で一律のランキングを発表する意味が薄れた」「性別や文系・理系、総合職・一般職などの属性で、大きな差が出ており、総合的なランキングの発表は学生の誤解を招く懸念が高まっている」とのことした。

 「正にその通り」と取りやめを歓迎したいと思います。細かいことを言えば、「学生の誤解を招く懸念が高まっている」というよりも、これまで十分に誤解させてきたと言う方が正しいのでしょうが。

 このランキングで上位に行くことを、目標としてきた会社もあります。上位にランキングされると、学生への認知度が高まり、応募者増につながります。また、学生に対してだけではなく、「新聞に『人気企業ランキング』で会社名が登場することは、ブランド力向上にプラスだ(社名が出ることは、悪い内容でなければ何でもブランドマネジメントに寄与する)」と考えてきたと思います。

 社内の人たちの気持ちをくすぐる効果もあるでしょう。「自分は、大学生から人気のある企業に勤めている」というのは、ちょっとうれしいと感じるでしょうし、実はそれを相当のプライドとして持っているかもしれません。

 「景気の移り変わりや世相を表している」と言われて、割と注目されてきたランキングですが、これが学生の就職活動に与えてきた影響は相当大きいと考えられます。「行列ができる店はウマイのだろう」という発想と同じで、「人気があるということは良い会社なのだろう」と考えてそこに行ってみる。キャリアセンターの職員の人たちにしても、大学のブランド作りにつながる(キャリアセンターの実績作りになる)ので、本人の希望や適性や会社の実際の姿は別にして、ランキング上位の会社にたくさん入社してほしいと思っていますし、そのような指導を行いがちです。

 「会社は明確に序列化できる」といったような勘違いを与え、上から順に志望するなど、ランキング的な発想でこれまで就職活動が展開されてきたのは、「就職志望企業ランキング」の存在が大きかったのでしょう。

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