会社員は泣き寝入りしかないのか? 震災を口実にした“便乗解雇”吉田典史の時事日想(1/3 ページ)

» 2011年04月15日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

著者プロフィール:吉田典史(よしだ・のりふみ)

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2005年よりフリー。主に、経営、経済分野で取材・執筆・編集を続ける。雑誌では『人事マネジメント』(ビジネスパブリッシング社)や『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)、インターネットではNBオンライン(日経BP社)やダイヤモンドオンライン(ダイヤモンド社)で執筆中。このほか日本マンパワーや専門学校で文章指導の講師を務める。

著書に『非正社員から正社員になる!』(光文社)、『年収1000万円!稼ぐ「ライター」の仕事術』(同文舘出版)、『あの日、「負け組社員」になった…他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)、『いますぐ「さすが」と言いなさい!』(ビジネス社)など。ブログ「吉田典史の編集部」、Twitterアカウント:@katigumi


 国内観測史上最大のマグニチュード9.0を記録した東日本大震災が発生し、1カ月が過ぎた。死者・行方不明者の数は日を追うごとに増え、依然として被害の全容が正確に分からない。雇用不安もまた、目に見える形となって現れてきた。

 東北の地方紙・河北新報社によると、東北の各労働局への雇用に関する相談は3月28日現在、青森、岩手、宮城、福島の4県で計2万9531件。内訳は、宮城が2万3184件と突出して多く、次いで岩手3750件、青森1354件、福島1243件と続く。経営者と労働者の双方から相談が寄せられ、その内容は賃金や休業手当、解雇、雇用維持などについてのものが多い。

監督署に相談者が押し寄せる

 異例の事態とはいえ、労働局や労働基準監督署はこれらの労働相談にきちんとした対応ができているのだろうか。ここ数年、全国の労働局や労働基準監督署の職員らはフル稼働の状態である。2008年秋のリーマンショック以降は深刻な不況により、労働相談に行く労働者らが増え続けている。

 例えば、2009年に取材した都内の監督署では年間1100件の相談に対し、10人ほどの監督官で対応をしていた。年間で1人の監督官が100件以上の案件を抱え込む。労使間のトラブルは解決までに短くとも数週間、長い場合は数カ月、時には1年以上かかる。これでは、相談業務は“流れ作業”になっている可能性がある。ましてや震災以降の1カ月間で、それぞれの監督署に数千人が押し寄せている。

 厚生労働省はこのような事態を踏まえ、4月5日、宮城、岩手、福島3県の労働局で計300人の職員を増員することを明らかにした。そして岩手労働局は、被害の大きかった陸前高田市で出張労働相談会を開催した。しかし、もともとの体制が不十分である以上、被害の状況いかんでは職員をさらに増やす必要があるだろう。

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