被災者のためのWebサイト「仮住まいの輪」

» 2011年04月14日 19時03分 公開
[本間美紀,エキサイトイズム]
エキサイトイズム

エキサイトイズムとは?

「高い美意識と審美眼を持ち、本物を知った30代男性」に向けたライフスタイルのクオリティアップを提案する、インターネットメディアです。アート、デザイン、インテリアといった知的男性の好奇心、美意識に訴えるテーマを中心に情報発信しています。2002年11月スタート。

※この記事は、エキサイトイズムより転載しています。


 4月1日から、被災者のためのWebサイト「仮住まいの輪」の運営が始まった。分かりやすくいえば「一時的な住まいのマッチングシステム」で、住まいを失いながら、新しい一歩を踏み出したい人と、賃貸住宅の空き室や、自宅の空き部屋を貸したい人をマッチングするシステムだ。ベースとなるのは「一時使用賃借」の考え方。

 この発起人には、デザイナーや建築家、そして不動産や弁護士など各界のプロが名を連ねる。ブルースタジオの大島芳彦氏、石井健氏、みかんぐみの竹内昌義氏やシェアハウスが話題のひつじ不動産北川大祐氏など、デザインメディアでおなじみの名前も見える。そして不動産、ジャーナリスト、工務店、金融、法律、教育と各分野の厚い知性が集結している。参加者はすべて有志。

 住めるのは1〜3カ月などの期間限定、原則として家賃はなし(光熱費などの実費は物件により条件は違う)。再出発までのスタートを支援する。仮住まいを探したい人、提供したい人別に登録と検索ができ、受け入れ人数や期間の表示もある。きちんと条件を先に示して、双方がトラブルを避けるために必要な契約書の書式も用意されている(詳細はWebサイトを参照)。

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 すでにサイトには「たった今から入居可能な」さまざまな住宅が掲載され、被災者からの申し込みを待っている。物件はワンルームマンションや一戸建て、別荘、ホテル、自宅の一室を提供するホームステイまで、それぞれ個性的だ。

 とはいえ、一般的な不動産情報と違い、そこには人間味がただよう。ホームステイ形式には、温かみある言葉が添えられた募集もある。美しい古民家で暮らす家族が、自宅の一室を貸し出し、「基本的に食事提供はありませんが、一緒に食事できる日があればと思っています」。都心のマンション住まいの家族からは「お子さん連れ歓迎。満開の桜とお待ちしています」。都内のマンションに住む30代の若夫婦が、6帖弱の寝室を提供するケースもある。

 もちろん切迫した状況の中の支援システムではあるのだが、Webサイトから感じられる支援はリアルでどこかユーモラス。ほっとさせる何かがある。人気の不動産サイト「東京R不動産」的な、顔の見えるシステムだ。

 発起人は大阪のデザインリノベで知られるアートアンドクラフトの中谷ノボルさん。阪神大震災の経験から、「仮設住宅が必死で建てまくられた。けれどもその後、余ってしまった住宅もあった」と中谷さん。

 現在、津波や原発事故の影響で住まいが圧倒的に足りていない。その推計は15万戸以上といわれている。一方で、エネルギーや材料を無駄なく使うことが、今後は強く求められている。今こそ、既存ストックとなっている「空き住宅」を活用しようという発想だ。部材や住宅設備の供給がスムーズに行かない中、仮設住宅を新設するのを待つよりも早い。さらに仮設住宅は後にスクラップにされてしまうことを考えれば、エネルギーや材料も節約できる。

 震災発生の2日後、3月13日にはこの企画が動きだし、実際に「借りる、貸す」の現場でどんなリスクがあるか、トラブルが起こりうるか、経験を基に話し合ったという。

 もともとリノベーションは、ただの「内装デザイン」ではなく、中古住宅を既存ストックとして再活用するという発想から生まれている。普段の仕事で中古住宅の活用やシェアハウスなど、新しい住み方を考えているプロのネットワークが即時に実効したかたちだ。

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