なぜ新聞が面白くないのか――それは人事が“残念”だから烏賀陽弘道×窪田順生の“残念な新聞”(4)(1/4 ページ)

» 2011年04月12日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 全国紙の新人記者はまず地方に配属され、いわゆる“察回り”で経験を積んでいく。大学を卒業したばかりの記者が、警察からどのようにしてネタをつかむのか。「地方面を読んでもつまらない記事ばかり」と感じてしまう背景には、新聞社の人事的な問題が潜んでいるのかもしれない。

若いうちから取り込まれる

烏賀陽弘道さん

窪田:「警察が新人記者を育てている」という構図がありますが、これっておかしな話ですよね。そもそも警察が新人記者を教育する義務なんてない。息子と同じくらいの年齢の記者が毎年のように「よろしくお願いします」とやって来るわけですが、彼らからすると「面倒くさいなあ」と感じているのではないでしょうか。

烏賀陽:僕は駆け出しのころ、三重県警の幹部とものすごく仲良くなった。たくさんのネタを教えてもらったが、きっかけはその幹部の息子さんが京都の大学に通っていて、僕の実家のすぐそばに住んでいたから(笑)。

窪田:ハハハ。

烏賀陽:その幹部は「烏賀陽くんを見ていると、ウチの息子を思い出すんだよ」と、よく言っていた(笑)。新人記者なんてそんなレベルでしか、食い込めないんですよ。

窪田:そんなレベルで紙面を作っていることを考えると、やはり新聞は地方読者をバカにしている(笑)。

烏賀陽:「読者をバカにしている」もなにも、そんな職業的力量が未熟なちびっ子記者が「権力を監視」なんてできるわけがないじゃないですか(笑)。

窪田:絶対にできない。

烏賀陽:新人記者は「警察から検察への送致って、えーと、48時間でしたっけ?」とお巡りさんに聞くことから始める。それをクリアすると、検察官に「すいません。拘留って、2週間でしたっけ? 20日間でしたっけ?」と聞いたりする。そんなレベルの記者を信用して「実はオレ、フロッピーディスクを改ざんしちゃって」なんて言うわけがない。

窪田:絶対に言いませんよ(笑)。

烏賀陽:決して対等とは見なさないでしょう。もし僕が警察の立場だったら「こいつならコワくないな」と安心します(笑)。しかし経験の浅い記者が警察、検察、裁判所を担当する。この3つは権力監視の最激戦地なのに、なんで一番経験の浅い若い記者に取材させるのだろう。

窪田:若いうちから、権力に取り込まれる可能性も高くなりますね。

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.