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» 2011年04月12日 08時00分 UPDATE

コンビニ、ヒット商品の理由:“食べ方”という戦場を創造――シェア95%以上、雪印「さけるチーズ」 (1/2)

コンビニのおつまみ売り場に並べられている「さけるチーズ」。このマーケットで雪印は95%以上のシェアを持っている。なぜ、雪印はこの分野で独走できているのだろうか。

[笠井清志,Business Media 誠]

「コンビニ、ヒット商品の理由」とは?:

限られた売り場を最大限に活用して、面積当たりの売り上げを高めているコンビニ。約100種類の新商品が毎週発売されているが、売れない商品は発売から2週間ほどで撤去されてしまう。厳しい審判をくぐり抜け、コンビニでヒットしているのはどんな商品なのか。一般には「おいしい商品」「お得な商品」「テレビCMが放映されている商品」が売れると思われがちだが、実は重要なのは「店頭展開」。このコラムでは、コンビニのヒット商品を展開方法の観点から分析していく。


 コンビニのおつまみ売り場の一角に並べられている雪印の「さけるチーズ」(雪印)。その歴史は意外なほど古く、初めて登場したのは今から約30年前、1980年のこと。当初は「ストリングチーズ」という名前で発売された(1995年に「さけるチーズ」に改称)。

ah_sakeru1.jpg 「さけるチーズ」(出典:雪印)

 当時のチーズ市場は、商品の種類が少なく、消費者の購入頻度も低かった。食べ方としても定番の「6Pチーズ」に代表されるような、何も手を加えず、そのまま食べる商品が主流であった。

 そんな中、雪印が発売した「さけるチーズ」。この“裂ける”という物性は、モッツァレラチーズを作る過程で、チーズを伸ばして引っ張ると、裂きイカのように裂ける現象を応用したものである。

 雪印の開発方針の1つに「お客さまに驚きを与える」というものがある。雪印は“裂ける”という物性は他社商品にはなく、お客様の興味を喚起するものであるとして、手作業で生産(現在は機械生産)。まず地域限定でテストマーケティングを実施し、その結果を踏まえて全国展開に踏み出したのである。

ah_sakeru2.jpg 「さけるチーズ」の作り方(出典:雪印)

 発売後のプロモーションではテレビCMを重点的に打っていったが、ここでは「細く裂ける」という物性のみをPR。他社の商品にない特徴ということで、そのPRを5年間続けた。

 他社にない商品となった背景には、雪印がナチュラルチーズ規格としての「さけるチーズ」の特許を取得していたことがある。他社は加工チーズしか使えないため、味も裂け方もナチュラルチーズとは異なるものとなるので、差別化が図れたのだ。現在、雪印は「さけるチーズ」市場で95%以上のシェアを獲得している。

 コンビニは、チーズをおつまみとして展開している。そうした需要を意識して、当初は2本入りタイプのほかに、コンビニ向けに1本入りタイプも新たに発売。価格を90円(現在は100円)とほかのおつまみより安く設定したことで、優位性も持たせた。

 地域別に見ると、1990年代後半までは北海道と関東ではよく売れていたのだが、そのほかのエリアの売り上げは芳しくなかった。そこで、弱いエリアに対しては、テレビCMに加えて「エリアマーケティング」を実施。商圏人口などから計算した潜在需要と、エリア別売り上げを比較検討し、ギャップの大きいエリアをてこ入れしたのである。こうした販促努力もあって、発売から30年以上経った今でも、売り上げが増加し続けている。

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