新聞社が縮小すれば、“ジャーナリズム精神”も衰えるのか烏賀陽弘道×窪田順生の“残念な新聞”(5)(3/3 ページ)

» 2011年04月13日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]
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若い記者の今後が心配

窪田順生さん

窪田:全国紙で記者をしている40代の人たちと話す機会があって、「これからどうする?」といった話題になった。その場にいた全員が「オレは辞めないなあ。確かに先はないかもしれないが、オレがいる間は会社もつぶれないと思うから」と言っていました。

 みなさんジャーナリストとして忸怩(じくじ)たる思いがあるはずですが、やはり生活者としての立場もある。ただ日本のジャーナリズムを考えると、こうした人たちがくすぶっているのは大きな損失ですよね。

烏賀陽:僕も福岡県で働く30歳前後の若い記者と話す機会があった。「将来、どんなジャンルを取材したいのですか?」と聞いてみた。すると「古典芸能が好きなので、落語や文楽を取材したいですね」と言ったあと「まあ会社があればの話ですが」とつぶやいていた。みんな将来の夢を語ったあと「そのとき、会社があればの話ですが……」と暗い顔で下の句を付けるですよ(笑)。

 30歳前後というのは、キャリアビルディングにとても大切な時期。「記者としてどういったキャリアを積んでいくのか」と夢がある時期なのに、彼らは暗い話になる。彼らの今後の記者人生が心配ですね。

 →続く

2人のプロフィール

烏賀陽弘道(うがや・ひろみち)

1963年、京都市生まれ。1986年に京都大学経済学部を卒業し、朝日新聞社記者になる。三重県津支局、愛知県岡崎支局、名古屋本社社会部を経て、1991年から2001年まで『アエラ』編集部記者。 1992年にコロンビア大学修士課程に自費留学し、国際安全保障論(核戦略)で修士課程を修了。1998年から1999年までニューヨークに駐在。 2003年に退社しフリーランス。著書に『「朝日」ともあろうものが。 』(河出文庫)、『Jポップとは何か―巨大化する音楽産業 』(岩波新書)などがある。

窪田順生(くぼた・まさき)

1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、フライデー、朝日新聞、実話紙などを経て、現在はノンフィクションライターとして活躍するほか、企業の報道対策アドバイザーも務める。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。著書に『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術 』(講談社α文庫)などがある。


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