烏賀陽:米国では、弁護士が3年間だけ記者をしたりすることもある。そして米国の記者クラブはそういう人を拒んだりしない。ジャーナリズムの原則を守っていれば、弁護士であろうが関係ないんですよ。
雇用形態や就労形態が変わったとしても「自由な市民に権力から自由であるための情報を提供する」のであれば、全く問題ない。「権力から市民が自由であるための情報が提供される」のであれば、誰が書こうが問題ないんですよ。
窪田:支局に行かなくても、ジャーナリストになれるわけですね。
烏賀陽:ハハハ。冒頭の「社員純血主義」がいかに間違っているか分かるでしょう? (関連記事)
窪田:ただ日本の新聞社で働きながら「フリーでやっていこう」という記者はどのくらいいるんでしょうね。
烏賀陽:あまりいないと思う。今のようにたくさんの給料をもらっていれば、なかなか辞めることなんてできませんから。ちなみにWebサイト「年収ラボ(参照リンク)」によると、朝日新聞の平均年収は1241万円(42歳)、日経新聞が1204万円(40.9歳)――。
烏賀陽:日本のメディア業界では「労働力の流動化」が起きていない。流動化が起きていないのに、メディアのシフトだけが起きている。例えるとタイタニック号は沈んでいっているのに、そこにオリンピックに出場できる選手がゴロゴロいるようなもの。優秀な記者が沈んでいくのは、日本にとっても大きな損失なのに……。
インターネットメディアは勃興(ぼっこう)しているが、まだまだマネタイズの仕組みが完成していない。日本の大手メディアを辞めて、彼らにどのように対価を支払えばいいのか。その原資をどのように確保すればいいのか。そんな環境で住宅ローンや子どもの学費を抱える彼らに「会社を辞めろ」なんて、僕は言えない。
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