コラム
» 2011年04月11日 08時00分 UPDATE

藤田正美の時事日想:汚水処理場がないのにトイレを使うようなもの……日本の原発は (1/3)

福島第1原発の事故は、日本のエネルギー政策の失敗を意味しているのではないだろうか。電力料金は高いし、安定したエネルギーの切り札とされた核燃料サイクルも実現していない。政府はまず「政策は失敗だった」ことを認めるべきだろう。

[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 なかなか先が見えてこない東京電力福島第1原発の事故だが、ハッキリしていることもある。現在問題になっている4つの原子炉は廃炉せざるを得ないということだ。大きな損傷がなかった5号機、6号機の運転を再開することは技術的には可能だろう。だが政府や福島県を納得させられるだろうか。東電首脳は2基合計で出力188万キロワットという発電能力に未練があるようだが、枝野官房長官は5号機と6号機についても廃炉にすることをにおわせている。

 もちろん第1原発の中に増設を検討していた7号機や8号機(2016年から17年に完成することを目標としていた)もどこかに飛んでしまった。敷地が元の状態に戻らなければ新しい原発どころではないが、土地の放射能汚染を除去するためには少なくとも表面の土を入れ替えなくてはなるまい。その作業には膨大なコストと時間がかかるはずだ。

 政治的という意味では、地震発生後緊急停止し、冷温停止状態となっている福島第2原発の再開にも懸念がないわけではない。あれだけの地震と津波を乗り切ったことが「実績」として評価されるのか、それとも地元住民の「もう原発はこりごり」という感情を無視できなくなるのか、そこのところは微妙だと思う。もし出力440万キロワットの第2原発まで再開できないとなると経営的にも大問題だ。

原子力発電所の弱点

 今回の事故で日本の原子力の弱点も露呈した。それは使用済み核燃料である。定期検査中で動いていなかった第1原発の4号機が爆発を起こしたのは、使用済み核燃料プールで水が減少し、一部で燃料棒が露出した結果と考えられている。第1原発に貯蔵されている核燃料棒は、原子炉建屋のプールと共用プールに貯蔵されているものを合計すると1万本を超えているという。

 これほどの燃料棒が貯蔵されているのは、再処理(使用済み核燃料を処理して再度燃料として利用できる状態にする)が遅れているからだ。青森県上北郡の六ヶ所村で再処理施設が建設されているが、完成予定がずれ込み今のところ2012年ということになっている。

 さらに問題なのは、核のゴミである。原子炉を廃炉にすれば高レベル放射性廃棄物が出るが、燃料を再処理したときにもやはり高レベル廃棄物が出る。この核のゴミの最終処分はそれぞれの国が責任をもってやることになっているのだが、処分場をどこに立地するのかが決まっていない。例えて言えば、下水道や汚水処理場が整備されていないのに水洗トイレを使っているような状態だ。

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