Interview:ピエール・エルメ、「ロワイヤル・モンソー」を語る(3/3 ページ)

» 2011年04月09日 17時20分 公開
[松浦明,エキサイトイズム]
エキサイトイズム
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――なかでもフレンチレストラン「La Cuisine」では、ゲスト自らの創意工夫で20以上の味覚のコンビネーションが堪能できるとうかがいました。20以上となると、われわれの創造を少し超える内容なのですが、具体的にはどのような内容なのでしょうか?

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 コンビネゾン(コンビネーション)でセミオーダー式にご注文いただき、シェフがゲストの目の前で創作するミルフィーユのことですね? これはすべてゼロから創作するのではなく、3段階に分けていくつかの選択肢から選んでいただくのですが、具体的にはまず、生地はプレーン、ピスタチオ、レモンの3種から。

 次のステップでクリームをショコラ、ピスタチオ、ヴァニラ、レモン、キャラメルの5種類の中から1つを選びます。最後にガルニチュール(生地の中に詰めるもの)を、イチゴやフランボワーズ、フルールドセル入りのショコラやプラリネ、キャラメルの3種から選んで完成するのですが、それぞれの組み合わせ次第で20種以上のミルフィーユバリエーションが楽しんでいただけることになります。

 ちなみに定番のスイーツもお召し上がりいただけます。さらに「La Cuisine」では、バーやラウンジでも提供するマカロンやプレジュール・ショコラなどの定番品も召し上がっていただけます。

――イタリアンレストラン「Il Carpaccio」では、パンナコッタやティラミスといったクラシックなイタリアンドルチェの定番といえるアイテムを提案されるそうですが?

 「Il Carpaccio」では、ティラミス、パンナコッタ、地中海レモンのシャーベットといったイタリアの伝統菓子のデザートをエルメ流にアレンジします。ここではまず、本場の味を再発見する歓びを味わっていただけることをまず第一に考えているのですが、それらと同時に「ピエール・エルメ・パリ」ならではの創意に満ちたオリジナルイタリアンドルチェも提供します。

――ホテルといえば、朝食も重要な要素ですが、朝食ではどのように「ピエール・エルメ・パリ」の世界を提案されるのでしょうか?

 朝食では、シンプルでありながら洗練された提案を心がけました。自家製ヨーグルト、ヴィエノワズリ、フルーツサラダが基本ですが、ほかにもクグロフやガトー・バチュー(おやつや朝食として親しまれている地方の伝統菓子)、パンとともに召し上がっていただけるコンフィチュールやショコラなどはもちろんすべてオリジナルです。特に「ピエール・エルメ・パリ」ならではという意味では、クレープ、パンケーキ、リロワーズをおすすめします(クレープは、プレーン、栗粉、ピスタチオ粉から選択可能)。

 ちなみに、「リロワーズ」は、北フランスにあるリール地方の伝統的な菓子で、「リール風のゴーフル」といえば分かりやすいかもしれません。一般のゴーフル生地よりも薄いブリオッシュ生地の間にガルニチュールが入っている生菓子です。日本でも昨年、非常に限られた期間発売したのですが、大変好評だったのでまた販売したいですね。とにかく「リロワーズ」は私自身がとても好きなお菓子で、これはおそらく日本でも過去のカヌレブームのように話題のスイーツに発展するのでないかと期待しています。

――エルメさんがこのホテルの計画の中で一番エキサイティングに感じられていることは何でしょうか? また今後ロワイヤルモンソーのゲストとなる人々に、特に楽しんでもらいたい点は何でしょうか?

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 普通であれば、ホテルでそのデザインや意匠以外で一番真っ先に話題になるのは料理ですよね? 先ほどもお話したように、スイーツを主役としてそのコンセプトを打ち出したのはこのホテルが初めてとなるわけですから、新たな美食の殿堂として今後どのように発展していくのか、とにかく私にとってそうであるように、ゲストの皆さんにとっても何もかもがエキサイティングであると信じています。

――ホテルのデザインを手がけているフィリップ・スタルク氏とは今回何らかのかたちで関わられているのでしょうか?

 スタルク氏はそれこそ、オリジナルのスイーツ専用カトラリーをデザインしてもらったこともありますし、旧知の仲なのですが、今回は彼とはそこまで多くの部分では関わっていません。彼はもちろんホテル全体の設計/デザインをすべて担当していますので、スイーツのショーケースなど什器のことは話し合ったりしていますが、実はそのショーケースは納期が予定より遅れていてまだホテルに設置されていないのです(笑) もちろんですが、彼がデザインしただけに、どのディテールも大変凝っていてオリジナリティ豊かで、とにかく視線を落とす先々で私たちの感覚を楽しませてくれます。

――最後の質問ですが、エルメさんにとって「美味しいチョコレートの条件」とは?

 シンプルですが、ひと言でお答えするのは難しい質問ですね(笑) まず、大切なのは材料。美味しいカカオと、そして美味しいクーベルチュール。何であれ同じことですが、素材が第一。いくら見た目が美しくても素材がよくなければすべてが台無しですから。

 私なりの答えとしては、やはり口に入れたときにチョコレートの存在感がきちんと五感に伝わってくるもの。特にボンボンショコラにはいろいろなフレーバーや食感が共存しますから、その中でもきちんとチョコレートの存在感や美味しさが伝わってくることが大切だと思っています。いろんなご託を並べるよりも、大切なのは、食べた瞬間に素直に「美味しい!」と感動し、そのひとくちで自然と笑顔が生まれることではないでしょうか?

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