海外でのイメージは? 原発事故を起こした“フクシマ”松田雅央の時事日想(1/3 ページ)

» 2011年04月07日 08時00分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

著者プロフィール:松田雅央(まつだまさひろ)

ドイツ・カールスルーエ市在住ジャーナリスト。東京都立大学工学研究科大学院修了後、1995年渡独。ドイツ及び欧州の環境活動やまちづくりをテーマに、執筆、講演、研究調査、視察コーディネートを行う。記事連載「EUレポート(日本経済研究所/月報)」、「環境・エネルギー先端レポート(ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社/月次ニュースレター)」、著書に「環境先進国ドイツの今」、「ドイツ・人が主役のまちづくり」など。ドイツ・ジャーナリスト協会(DJV)会員。公式サイト:「ドイツ環境情報のページ


 この3週間で原発事故の状況は大きく変わり、それに伴って海外の関心も変化してきた。原子炉の状況は予断を許さないものの小康状態を保っており、「原子炉崩壊、秒読み段階」といったセンセーショナルな海外メディアの見出しは姿を消している。

 その一方、放射能汚染は対策のめどが立たず、漏出を止めるには数カ月を要すると発表されるなど状況は深刻である。「地球は1つ」とはよく言ったもの。放射性物質は結局世界に拡散し、経済的な影響は常にグローバルだ。

 原発事故対策は新たな段階に突入し、日本のとるべき対外戦略も新局面に入ったと言えよう。ここでは、これから福島と日本が直面するネガティブイメージとの闘いについて考えてみたい。

福島第1原発(出典:東京電力)

今も続くチェルノブイリの悪夢

 端的に書けば、このままゆくと「フクシマ」は原発と放射能の恐ろしさを語る上で、「チェルノブイリ」と同列の不名誉なキーワードになってしまう。

 チェルノブイリ原発事故の際、欧州が受けた被害とショックは、日本のそれとは比べものにならない。未曾有の規模、放射性物質の飛来、そしてソ連の秘密主義が市民の不安をさらにかき立てた。筆者の住む地域はチェルノブイリから2000キロ近く離れているが、25年経った今も放射性物質に汚染された土地が点在し、そこで狩猟されたイノシシの肉は検査が義務付けられている。食肉に対する放射性物質の制限値「600ベクレル/キログラム」を超えることはほとんどないとはいえ、欧州にとってチェルノブイリの脅威は現在進行形である。

 ほとんどの日本人もチェルノブイリと聞けば放射能汚染によるネガティブなイメージを思い浮かべるだろう。もし世界の人々が将来フクシマの名を聞いて同じように感じるとしたら、日本人としてこれほど悲しいことはない。

 先日、あるドイツ人から次のように言われ少なからずショックを受けた。「日本は“死の列島”になってしまった。もう誰も行きたがらないよ」。その無神経なもの言いに腹が立ったが、悪気があっての発言ではない。こういったネガティブな意識は早くも人々の心に深く根を伸ばしている。

 感情の問題だけでなく「福島産の製品が世界で売れない」「福島にある会社が不利益を被る」といった実害もある。筆者の知る福島の会社はオーストリアの会社と商談を進めているが、原発事故により会社のイメージが損なわれたのではないかと危惧している。

 企業だけでなく国や地域にとっても、イメージは守り育ててゆかなければならない極めて大切な財産だ。

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