いざ仕事を始めてみれば分かりますが、本当にビジネス現場の時間はせわしなく流れていきます。日々の業務をこなすことに追われていると、1年、3年、5年、10年があっという間に消えてしまうものです。そんななかで、私が重要だと思うのは、漫然と日々を過ごさないということです。そのためにお勧めしたいのが「30年の計」を立てることです。
ピーター・ドラッカーの次の言葉を紹介しましょう―――
「私が13歳のとき、宗教のすばらしい先生がいた。教室の中を歩きながら、『何によって憶えられたいかね』と聞いた。誰も答えられなかった。先生は笑いながらこういった。『今答えられるとは思わない。でも、50歳になっても答えられなければ、人生を無駄にしたことになるよ』」(『プロフェッショナルの条件』より)
強く優れた組織は、必ずと言っていいほど、長期の理念やビジョンの下に進んでいます。個人のキャリア・人生についても同じことが言えます。「50歳までに何か自分の存在意義を残したい」というのはある種の理念であり、ビジョンです。
変化の激しい時代ですから、20代、30代、40代は実にいろいろなことが起こるでしょう。成功もあれば失敗もある、順風も吹けば逆風も吹く、漂流や停滞する時期が幾度となく訪れる。若いころは悩みや迷いがつきものです。しかし、「50歳の時点で納得したキャリア・人生を送っているかどうかが本当の勝負だ」と腹をすえていれば、短期の波風などは楽観的に見つめられるようになります。ですからどうか、長期のどっしりとした想い・ビジョンをもって仕事に向かってください。
少子高齢化や人口動態の変化を受けて、メディアは「縮むニッポン」というフレーズを使い始めました。考えてみれば、大人がこうした悲観を含んだ表現を使うことは、これからを担って立つみなさんには失礼な話であると思います。みなさんはどうかこうした悲観の言葉に飲み込まれないでいただきたい。どうか「縮んでたまるか」という気概をもって、だらしのない大人たちを目覚めさせてください。
では、みなさんが50歳になったときにまたお会いしましょう。そこでみなさんお一人お一人が「自分が憶えられる何か」が見つかっていますように(祈)。(村山昇)
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