大手新聞はどんな問題を抱えているのか――給与に“隠微な差”烏賀陽弘道×窪田順生の“残念な新聞”(1)(3/4 ページ)

» 2011年04月05日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

給与面の問題

ノンフィクションライターの窪田順生さん

烏賀陽:朝日新聞は1998年ごろから、さまざまな部署の子会社化を始めました。しかし給与体系などは朝日新聞とほぼ同じだった。

 まず最初に子会社化にしたのが、印刷現場です。例えば「朝日新聞印刷局」という社名を「朝日プリンテック」などと変えたりした。従業員はそこに出向させられて戻ることができない。そして朝日プリンテックは新入社員の採用を始めた。新入社員の給与を聞いてみると、“朝日組”の半分くらい、よくて3分の2ほど。

 そうした給与格差が存在していると、現場の輪転機の前で働いている同僚の間で、給料の話はタブーだそうですね。仕事の内容は変わらないのに、朝日組の年収は1000万円を超えていて、プリンテック組は500〜600万円ほど。これだけの格差があると、給料の話などできるわけがない。

窪田:『週刊朝日』でもよく似たことが起きていますね。ジャーナリズムの専門学校や大学のマスコミ科などを卒業した人が、紹介で『週刊朝日』の契約記者になったりする。しかし同じ年代でも、朝日組と契約記者の年収は違う。さきほどの印刷工場と同じようなことが雑誌の編集部でも起きていて、編集部内でも年収の話はタブーのようですね。

 出版社系の週刊誌でも社員の編集者と契約記者がいますが、編集者はマネージメントに徹しているケースが多い。例えば『週刊新潮』では社員の記者と契約記者の待遇はなにも変わらない。なので『週刊新潮』の契約記者は長く活躍されている方が多いですね。

 一方で『週刊朝日』のように記者職で、朝日組と契約組が混在していて、さらに給料に差があるケースもある。新聞社系と出版社系の雑誌は文化が違うし、この問題に「良い・悪い」はないと思う。ただ契約記者の立場からすると、納得できない部分もあるのではないでしょうか。

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