最大限節電しても今夏電力ピーク時は360万キロワット不足――野村総研試算

» 2011年04月04日 20時23分 公開
[Business Media 誠]

 野村総合研究所(野村総研)は3月30日、「2011年夏の電力供給不足への対応のあり方」を発表。今夏、節電に努めた場合、電力需要をどのくらい削減できるか試算したものだが、「最大限節電したと仮定しても電力ピーク時には約360万キロワット不足する」としている。

 東京電力が3月25日に発表した「今夏の需給見通しと対策について」では、今夏の最大電力需要を約5500万キロワット、供給力を約4650万キロワットと見込んでおり、約850万キロワットの供給力不足が生じるとしている。

 東京電力の計画では、今夏の最大電力需要が2010年夏の約6000万キロワットより8%減ると見込んでいるが、さらなる節電でどこまで需要を減らせるのか。野村総研では規模別に節電の効果を分析、最大電力需要の下限を探った。

需要抑制施策を講じた場合の想定効果(クリックで拡大、出典:野村総合研究所)

(1)大規模・中規模の工場やビル(今夏の最大電力見通し:1920万キロワット)

 総量規制※や輪番操業※※によって、約25%(350万キロワット)の最大電力需要を削減できると仮定した。

※総量規制……最大使用電力に対して、上限を課す試み。
※※輪番操業……工場や店舗を曜日ごとに輪番で稼働することでトータルの需要を抑える試み。

 「総量規制を実行するためには、約款の変更や個別顧客との調整が必要になるため、個別交渉に割ける人的資源の制約から、総量規制の対象は特別高圧(契約口数:約2000)や高圧B(契約口数:約6000)に相当する大規模工場やビルを限界とするのが現実的」(野村総研)

(2)小規模な工場やビル、店舗(今夏の最大電力見通し:1880万キロワット)

 小規模店舗などの場合、庫内照明の絞り込みや温度制御による冷凍ショーケース関連の節電、空調や照明の節電で1〜2割ほど削減できると分析。デマンドコントローラーやエネルギーマネジメントシステムによって、20%以上節電できる工場やビルもあるが、小規模な工場などでは難しいということで、15%(140万キロワット)の最大電力需要削減を仮定した。

(3)一般家庭(今夏の最大電力見通し:1850万キロワット)

 東京電力の試算ですでに150万キロワットの需要削減を見込んでいるため、野村総研では追加の節電効果を見込まなかった。しかし、中越沖地震が起きた2007年の一般家庭の空調抑制による節電効果は54万キロワットなので、すでにこの3倍の需要削減を見込んでいることになる。

 夏の電力ピークは10〜17時だが、この時間帯に一般家庭が実行できる節電は、エアコンの温度設定を上げる、待機電力を減らすなど限定されている。「各家庭がさらにもう1度のエアコン温度を上げられるかどうかがポイント」(野村総研)

3月と8月の電力消費パターン(出典:野村総合研究所)

 一方、一般家庭などでの節電について野村総研では、「電気は貯められないため、一度でも需要と供給のバランスを損なうと大停電を引き起こす可能性がある。そのため、中小事業所や一般家庭の自発的な節電は現時点ではその効果がどの程度になるか予測することが難しく、大停電回避のためには確実に需要抑制可能な手段を用意しておく必要がある」ともコメントしている。

計画停電は不可避

 こうした算出された、追加削減電力の合計は490万キロワットだが、まだ最大電力需要が供給を360万キロワット上回っている。「他社融通や揚水式水力発電などの活用で、ある程度の需給ギャップは補われると思われるが、それでも供給不足を完全に補うのは難しい。この夏の計画停電は免れないと思われる」(野村総研)

 3月25日には電力需給緊急対策本部が設置され、4月末をめどに製作パッケージがまとめられる予定だ。野村総研では「電力需給緊急対策本部が計画通りに4月末までに計画停電の実施方針や停電対策を含めた政策パッケージを取りまとめ、5月以降は政策パッケージで示された各施策を迅速に実行することが重要」とコメントしている。

今夏の需要抑制施策と検討課題および検討スケジュールの素案(出典:野村総合研究所)

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