なぜ震災後に円が急騰したのか南はるなのFXのヒミツ(1/2 ページ)

» 2011年04月01日 08時00分 公開
[南はるな,Business Media 誠]

著者プロフィール

南はるな(みなみ・はるな)

株式会社マネックスFXでマーケティング部長を務める。アパレル業界でファッションを学んだ後、しばしの海外生活中に利用したインターネットの利便性に衝撃を受け、帰国後の2001年にアマゾンジャパン株式会社に入社。カスタマーサービス部門を経て、マーケティング部に異動。アフィリエイト・プログラムの運営など、オンラインマーケティング業務に従事。2009年にマネックスFXに入社、同年10月より現職。主にマーケティング企画やPRを担当。金融初心者である自身の経験を踏まえ、初めて投資を検討する人にも分かりやすい情報提供を行うべく、日々奮闘中。


 日本に甚大な被害をもたらした東北関東大震災発生から、3週間が経過しました。震災の余波を受けた為替市場では為替レートが乱高下したことはすでにご存じのことと思います。為替レートは世界各国の景気、経済動向や要人の発言などさまざまな要因によって変動しますが、今回は3月11日に発生した震災および一連の原発問題によってもたらされた、為替市場への影響を振り返ってみたいと思います。

投機筋の思惑

 地震発生前の3月7日(月)〜3月10日(木)、この4日間の米ドル/円の動きを見てみると、安値は1米ドル=81円後半、高値は83円前半で2円ほどの変動幅で推移していました(マネックスFX店頭取引の提供レートを参照)。地震当日の11日(金)も同様の動きで、地震が起こった午後3時ごろも市場は急激に反応しませんでした。しかしその後数日にわたってジリジリと円高方向に進み、80円付近まで到達した17日(木)日本時間の早朝6時ごろ、一気に円の戦後最高値1米ドル=76円25銭まで急騰しました。

(出典:マネックスFX)

 日本の有事であるにも関わらず、「なぜ円高が進行するのか?」と疑問に思う人もいるでしょう。日本経済が危機的状況であれば、円の価値が下がり、円が売られると考えるのが一般的。しかし阪神・淡路大震災後には外貨売り円買いが進み、為替市場は急激に円高方向に推移しました。その背景には日本企業や投資家が保有する海外資産を円に替えて震災による損失を埋めるのではないか――と投機筋が予測し、大規模な円買いを仕掛けたという説があります。そして今回の震災でも「同じ現象が起こるであろう」と想定し、大量の円買いに走ったと見られます。

為替取引が混乱

 為替取引は「売り」「買い」両方の需要をマッチングさせることによって成立します。しかし今回の円の急騰時には、最も流動性に乏しいニューヨーククローズからオセアニア時間帯(日本時間午前6時〜8時くらいまで)に一気に大量の円が買われたために値がつきませんでした。また銀行や証券会社においては一時的にレート配信がなくなったため、取引が成立しない緊急事態に。

 さらに円の急騰によって、米ドルを保有していた投資家の損切り注文(ドル売り円買い)が大量に発生し、円高進行を後押ししました。戦後の最高値76円25銭をつけた円はすぐに79円付近まで値を戻したものの、翌日18日(金)には再びジリジリと円高方向に進みました。そこで日本時間午前9時ごろ、ついに約10年半ぶりとなる協調介入が実施されたのです。

 協調介入とは、日米欧など複数の通貨当局が協力し、それぞれの為替相場市場で特定の通貨を対象に為替介入すること。今回は急激に進行した円高を阻止するための円売りドル買い。1つの国が実施する単独介入に比べて大規模で行われること、また各国が連携を表明することによって、為替市場への参加者に注意を喚起する効果が高いとされています。

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