会社が知りたいのは“あなた”――「志望動機」の書き方教えます吉田典史の時事日想(3/4 ページ)

» 2011年04月01日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

質問が来る仕掛け

 (1)は、「志望動機」の結論を書く。「自己紹介」と同じく、1つのセンテンスで収めたい。30秒以内で読み終えることができるようにしたい。大切なポイントは、自分がやりたい仕事(この場合は講師)のエッセンスに重きを置くこと。この場合の「エッセンス」とは、「会社がこの仕事をしていく上で他社と差別化をしている部分」と置き換えてもいい。例えば、この事例で取り上げた塾の個別指導は、相当に丁寧な指導をすることを売りとしている。これをあなたの言葉で書くのである。

 (2)では、その会社が同業他社(できれば、競合社がいい)と違う点を挙げるが、大事なことはあなたが志す仕事の観点からとらえた上で語ること。この事例では、(1)では「個別指導塾で講師をしていきたい」としているが、その仕事が他社とどこがどう違うのかを書くべきである。これは、会社案内や説明会などで確認すれば分かるはずだ。この部分が書かれてあると、面接官は「個別指導塾はほかにもたくさんあるが、こういう理由だからうちを受験したのだな」と思うだろう。

 内定が得られない学生は、(2)の部分が長くなる傾向がある。ここに力を入れて書いてもほかの学生との差別化はできない。面接官にも熱意は伝わらないだろう。面接官はその会社に長く在籍している人たちであり、あえて学生から自社の売りを指摘されたところでさほど感じるものはないだろう。面接は会社にゴマをする場ではなく、あなたを売り込む場であることを忘れてはいけない。

 (3)は、自分が会社を選んだ理由となった経験(エピソード)を具体的に書く。(1)と(2)を書くだけでは、ほかの学生との差別化が難しい。(3)であなた自身を語ることで個性的な内容となっていく。毎年、内定がなかなか得られない学生はこの(3)が苦手なのだ。つまり、経験やエピソードを持ち合わせていないのである。こればかりは、自分で考えるしかない。

 (3)と(4)のどちらに重きを置くかといえば、私は(3)であると思う。そのほうが個性的になり、差別化を図れる可能性が高い。

 最後の(4)では、「入社後、このようなことをしたい」という思いを書く。(3)との意味のつながりがスムーズになると、面接官に「こういった経験をしてきたから、こんな仕事をしたいのだな」と感じさせることができる。

 ここで「頑張ります」といった意味合いのことを書いただけで締めくくる学生がいるが、それでは説得力が弱い。せめてこのサンプルのように具体的な内容を書くべきだろう。イメージが湧くように書くと、面接官も質問がしやすくなる。前回の記事でも書いたが、エントリはあなたを売り込むメニューである。それを見た面接官が興味を持ち、質問をしないと意味がない。そのためにも、質問が来るような仕掛けを意識して作りたい。

 先ほどのサンプルで太字で強調した部分があるが、これは面接官が「これはどういうことなのですか」などと質問をしてくる可能性が高いところである。このようにあらかじめ質問が来るような部分を想像するだけでも、エントリを書き上げる力は多少上がっていくものである。

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