インタビュー
» 2011年04月01日 08時00分 UPDATE

あなたの隣のプロフェッショナル:国際会議を支える同時通訳者、その知られざる世界――浜瀬優重さん (1/5)

政府・産業界・学界を問わず、国際会議などの黒子として重要な役割を果たしている「同時通訳者」。多国間での折衝には欠かせない存在であるが、その仕事はどのようなものなのだろうか。COP15で日本政府代表の同時通訳者を務めた浜瀬優重さんにその内情をうかがった。

[嶋田淑之,Business Media 誠]

「あなたの隣のプロフェッショナル」とは?

 人生の多くの時間を、私たちは“仕事”に費やしています。でも、自分と異なる業界で働く人がどんな仕事をしているかは意外と知らないもの。「あなたの隣のプロフェッショナル」では、さまざまな仕事を取り上げ、その道で活躍中のプロフェッショナルに登場していただきます。

 日々、現場でどのように発想し、どう仕事に取り組んでいるのか。どんな試行錯誤を経て今に至っているのか――筆者は、「あの人に逢いたい!」に続き、戦略経営に詳しい嶋田淑之氏です。本連載では、知っているようで知らない、さまざまな仕事を取り上げていきます。


 政府・産業界・学界を問わず、国際会議などの黒子として重要な役割を果たしているのが「同時通訳者」だ。中でも、閣僚級以上による政府間折衝ともなれば、その成否は日本の国益を左右するわけだから、彼らの使命は重大だろう。

 しかし、彼ら同時通訳者が、一体どんな人々で、どのような見識・能力を持ち、どのような仕組みの中でこの仕事に臨んでいるのか、その実態を知る人は多くないはずだ。

 そこで、今回は過去四半世紀にわたって、政・官・民・学の各種国際会議などに同時通訳者として参加し、第15回気候変動枠組条約締結国会議(以下、COP15)で日本政府代表の同時通訳者を務めた浜瀬優重さんにお話をうかがった。

ah_hamase1.jpg 同時通訳者の浜瀬優重さん。COP15にて

COP15に日本政府の同時通訳者として参加

 COP15は2009年11〜12月、デンマークの首都コペンハーゲンで開催された。約190カ国から1万人以上が参加し、そのうち98カ国は首脳が出席したという世界規模の会議である。日本からも鳩山由紀夫首相(当時)らが出席したが、浜瀬さんはどのような経緯でこの会議に随行することになったのだろうか?

 「2009年12月に首脳会議が予定されていたのですが、それに先立って11月に閣僚級会議を開催することが急きょ決まったんです。

 その当時、私はフリーランスの同時通訳者としてのキャリアに終止符を打ち、現在の会社(ジーラス・コミュニケーションズ)を立ち上げて間もないころでした(2009年7月設立)。ちょうど、日本政府の通訳業務の入札に参加するための資格申請をしていたのですが、登録を済ませた正にその日に、環境省の入札があることを知り、早速参加することにしました」

 応札の結果、浜瀬さんはその閣僚級会議の2人の日本政府同時通訳者の1人として参加することになる。

 「とにかく時間がありませんでした。私なりにネットなどで情報収集をしましたが、会議の資料が手元に届いたのは出発の前夜です。会議に臨む各国のスタンスや、日本としての対応などが書かれているわけですが、それらはコペンハーゲンに向かう機内で読みました。到着後の打ち合わせに関しては、会議当日の朝にブリーフィングをやったのみです」

 こうして慌しく始まったCOP15の閣僚級会議。日本からは小沢鋭仁環境大臣(当時)と官僚1人が会議場に入った。

 「同時通訳というのは、すさまじい集中力を要するので、せいぜい15分くらいしか続きません。それで私ともう1人の2人体制で参加したわけです。日本語というのは国連の公用語ではないので、私たちには同時通訳用の専用ブースは与えられませんでした。それで会議場内の会話を生耳で直接聞き取り、同時通訳しないといけない点が大変でしたね」

 世界規模の国際会議ということで、諸外国の代表団との交流や情報交換などはあったのだろうか?

 「いえいえ、現地では徹夜続きで、そんな時間はまったくありませんでした。会議が終わったら、翌日の会議に向けて、夜は膨大な資料の読み込みをしないといけません。COP15に限らず国際会議ではそれが日常茶飯時で“1日2毛作”と私たちは呼んでいます(笑)。それに、そもそも私たち同時通訳者というのは完全な黒子なので、表に出て交流するということがないんです」

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