原発事故はいつ収束するのか?――東京電力・勝俣恒久会長が事故後初の会見(4/9 ページ)

» 2011年03月31日 08時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

今の事態を収束させ、安定させていくのが最大の経営責任

――(読売新聞)会見の冒頭で4回頭を下げておわびの言葉を述べましたが、勝俣会長と清水社長の経営責任について改めてどうお考えですか?

勝俣 思うところはありますが、当面、とにかく今の事態をいかに収束させ、安定させていくかが大事です。そこに全力を投入することが、私の最大の経営責任と考えています。

――(読売新聞)昨晩、清水社長が倒れましたが、公表まで半日かかっています。これまでの東電の発表で、データが1日遅れていたり、その後に訂正があったりと続いているのですが、情報伝達の姿勢についてどう認識されていますか?

勝俣 こうして、いろんなミスが生じたり、タイミングが遅れたということは大変申しわけなく思います。基本的に今のところで申しますと、「私たちが情報は隠す」といったことはまったくありません。システム的にも今、官邸や消防庁、経産省、保安院、自衛隊などが一緒になったところで、すべて報告し、会議をしています。これは福島第1原発、第2原発、オフサイトセンターも含めて、テレビ会議で行えるところで進めています。

 問題は、例えば「初日に官邸に福島第1原発1号機の爆発(の報告)があがるのが遅かった」とご指摘いただきました。当時の状況でいえば、現場に人が見に行きましが、その時に通信手段がまったく途絶えていたことを含めた遅れなどがあって、1時間遅れました。従って、こうした情報の遅れや発表のミス、こうしたところは全体会議の中できっちり議論しながら、「今後こうしよう」とか、「人をもう少しきちんと強化しよう」とか、そうした対策を講じているところです。

――(ロイター通信)東電は今後、債務超過に陥る可能性はあるとお考えですか。現在の東電の姿で存続できるでしょうか? また、引き続き民間で原発をそのリスクを負いながら続けることは可能でしょうか。

勝俣 東電の今後ですが、重要なファクターにunknownの部分が多いです。つまり、今の福島第1原発1〜4号機の収束などを含めて、どういう格好で落ち着くのかといった問題。

 それから損害賠償についても、原子力損害賠償法がどういう形で具体的な法律になって、私たちがどの程度救済されるかといったところの要素が非常にunknownなので、なかなか難しいです。ただ、ひと言で言えば、「大変厳しい状況が続く」ということかと思います。

 「原発が今後どうなるか」については、私の立場から言えるような状況に今ないので控えますが、今、他社の原発に影響していることは大変申しわけなく思っています。

――(NHK)計画停電に関してなのですが、夏のピークには明らかに需要が供給を上回ります。供給能力の増加の見通し、例えばガスタービンで何万キロワットとかそういう具体的な積み上げを教えてください。

勝俣 先ほど7月末までに4650万キロワットをと申しました。今、そうした新しいガスタービンなどのかき集めや、今故障しているものがどういう復旧見通しでできるかといったことを踏まえて検討していますが、さらに詰めて、最大限確保したいと考えています。

 そうした中でみなさんにいろんな手段を通じて節電をお願いしていますが、何とか夏場に計画停電をしないようにするために、全力を尽くしているところです。

――(NHK)株価の下落に歯止めがかからない状況ですが、今後の補償などで資金が不足するのではないでしょうか。

勝俣 おかげさまで金融業界などから、とりあえず2兆円を超える資金を担保しています。ただし、(1バレル当たりの)原油価格が100ドルになると、当然ながらLNGなどを含めて燃料代が上がり、復旧費も非常にかかるなど、いくらあっても足りない状況です。政府といろいろ協議をしながら、何とか資金不足に陥らないよう努力したいです。

――(フリーランス上杉氏)昨日、武藤副社長にも質問したのですが、清水社長がずっと出てきていないことで、国民が不安になり、世界中も心配しています。「統合本部含めて、いつも元気にやっている」と昨日は言っていたのが急転して、今回の入院になりました。今日の昼の説明だとどうしても納得できないのですが、これはあらかじめ入院する、いわば計画入院を考えていたのでしょうか。清水さんの病状や血圧も含めて、お伝えください。

勝俣 清水社長は、昼間は統合対策本部の会議にずっと出ていました。従って、私自身も「急にちょっと体調が悪くなった」と聞いてびっくりしました。基本的には、これまでの心労や過労、疲労といったところがたまり、血圧が高くなったり、多少めまいがしたりしたので、医師の診断をあおいだということです。本当に昼間は出ていました。

――(フリーランス上杉氏)福島第1原発3号機から出たというプルトニウム。4日前に質問した時はプルトニウムの検出をしていないどころか、「測定もしていない」「機器も外部から借りていない」と言っていましたが、3月21、22日に検査をしたと発表しているというのは矛盾していると思います。このあたりの整合性と、プルトニウムの検出、検査について政府にいつ報告したか教えてください。

武藤栄副社長 検出されたプルトニウムの試料は、3月21、22日に採取して、社外の鑑定機関に測定をお願いしていました。この結果が出るまでは、「プルトニウムの測定結果については、まだ測定結果が出ていない」と言っていました。毎日の会見の中で、「あと数日で結果が出る見込みである」とご説明したと私は記憶しています。3月28日に結果が出て、国にも測定結果についてご報告して、夜に公表しました。

武藤栄副社長

――(フリーランス上杉氏)3月26日に武藤さんが会見する前の日の1階の(実務者レベルの)会見では、「測定をしていない」、そして「機器を外部にこれから借ります」とはっきり明言されていました。その発言との矛盾があると思いますが。

武藤 その前から、「あと数日で結果が出る」と私は説明してきたつもりです

――(フリーランス上杉氏)プルトニウムの検出に関して、依頼されている2カ所の機関では通常22時間で結果が出るとありますが、なぜ1週間も時間がかかったのでしょうか。

武藤 アルファ線を出す核種の分析には、一般にベータ線やガンマ線の測定よりも時間がかかるということです。私たち自身も測定機器がないので、社外の機関に委託して、3月21、22日のサンプルを先方に持っていったりするのに時間がかかるります。その後、先方で測定開始して、3月28日にデータをいただいたということです

――(フリーランス上杉氏)福島第1原発3号機の爆発でヨウ素やセシウムが検出された時、同時にプルトニウムも検査するというのがIAEAを含めた指針だと思いますが、なぜ3号機爆発の直後にプルトニウムの検査を行わなかったのでしょうか。

武藤 プルトニウムの測定には時間がかかります。全体の放射能の傾向、あるいは放射線量率については、ベータ線やガンマ線を測定する方がはるかに早く結果が得られます。そのため、ベータ線やガンマ線の環境の状況を見て、その後、プルトニウムについては分析をすることに決まって、外部の機関にお願いしたということです。

――(しんぶん赤旗)「原子炉や格納容器の状況について、正確に把握するのはまだ難しい」とおっしゃっていましたが、原子炉から漏れているわけですよね。漏れている放射能を止めないと事態は良くなっていかないんじゃないかと思うのですが、その辺の見通しはあるのでしょうか。

武藤 原子炉の中から放射能が出てきている可能性は、おっしゃる通りだと思っています。漏洩(ろうえい)してくる量をこれ以上増やさないようにするためには、原子炉をしっかりと冷やすことが大変重要だと思っています。そのために、原子炉に注水を行ってきています。原子炉がうまく冷えなければ、出てくる放射能が増える可能性がありますが、そうならないようにいろんな方法で原子炉の中に注水を継続しています。

 その状況については、勝俣からご説明したように、ここ1週間ほどは非常に限られたパラメーターですが、原子炉圧力容器の温度や水位、圧力などはほぼ安定的に変化してきていると思っています。

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