緊急時の企業サイトのあり方とは――震災後1週間を経て考えた(2/3 ページ)

» 2011年03月25日 08時00分 公開
[安田英久,INSIGHT NOW!]
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散発的でもいいので一次情報をちゃんと出すことが大切

 今回の震災で総務省がチェーンメールへの注意を呼びかけたように、何かあればデマや誤った情報が流れます。ましてや、Twitterなどの「発言者の背景や各発言のコンテキストが読みづらい」ソーシャルメディアによって、誤情報が拡がりやすくなっています。

 そのため、企業サイトで正しい一次情報を掲載することは非常に重要です。

 千葉県の製油所の火災では「有害物質が降ってくる」というデマが流れましたが、コスモ石油は3月12日にそうした情報を否定する公式発表を掲載しています。この対応が遅ければ遅いほど、混乱が広がっていたでしょう。

 また、ドコモやKDDIのようにインフラを担う企業は、情報をコーポレートサイトで1日に何度も更新してリリースしていました。東京電力のコーポレートサイトでは、平常時には1日に1件程度のリリースですが、3月11日から21日までの間に160件以上の情報更新をしています。

必要に応じて「通常と異なる」判断をする必要がある

 震災関連の情報の企業サイトでの出し方を見ると分かるように、コーポレートサイト上にメッセージを出すスペースを特別に作って臨時情報を掲載しているサイトも多かったようです。

 通常のフローとは異なるやり方ですが、コンテンツ管理システムの通常のフローでは十分にメッセージを出せず、臨時に特別な処理をしたWeb担当者さんもいたことでしょう。「久しぶりにDreamweaver触って更新したよ」という人もいたかもしれません。

 また、定期発行しているメールマガジンや出稿している広告を、止めるのかそのままにしておくのかの判断も必要です(多くの企業がテレビCMを差し止めたため、テレビではACの広告ばかりになっているのはご存じの通りです)。

 CMSのテンプレートも更新ワークフローも広告発注フローも、日常に合わせて作っているはずです。緊急時には、通常とは異なる判断が必要です。だから大切なのは、誰がその判断をするのか、判断して実行する権限を持っているのか(または行動できるのか)です。

 有事には、経営陣は「どんな情報を発信するか」を考えても、「サイトでどう見せるか」まで考えられる状態ではないはずです。だから、企業の外向けのコミュニケーションを担うWeb担当者さんは、「今この状況で、コーポレートサイトでは何をすべきか」を一担当者の視点を越えて考えて判断する必要があるのです。

 Web担当者に権限がない場合は経営者に確認することになりますが、その場合でも「どうしましょうか?」とただ聞くのではなく、「こういうリスクがあるからこう処理するのが適切だと判断するが、そのように実行してもよいでしょうか」という確認の仕方ができるといいですね。

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