そんな中、支出側を取り合っている一般企業は「貯蓄側から支出側にお金を取り込もう」という努力をほとんどせず、ひたすらに支出内の取り合いに精を出してきました。
本来なら高齢者に対して、「お金は墓場に持って行けませんよ」「ほら、みなさんのためにこんなすばらしい商品やサービスを開発しましたから、元気なうちに貯金を使いましょう」「子孫に美田を残すより、自分の人生を楽しみましょう!」と啓蒙&営業すべきなのですが、実際にそういったメッセージ(貯蓄から消費へ)を見ることはほとんどありません。これでは日本の高齢者の巨額な貯蓄がなかなか消費に回らないのも当然です。
これまで長期間にわたり、国や金融業界は「消費より貯蓄」を強く奨励してきました。高齢者はそんな環境の中で長らく生きてきたのです。一般企業は(金融業界がやってきたように)業界で力を合わせ、大々的に「そんなにため込まなくても大丈夫」キャンペーンを実施しないと太刀打ちできません。「ため込まない素敵なシニア消費ライフ!」のようなアンチ・マネー誌をみんなで発行してもいいくらいです。
まずは「お金は支出の中だけで奪いあうものではなく、貯蓄と支出の間でこそ奪い合うものなのだ」ということに非金融の一般企業が早く気が付くことです。そうして初めて、「貯蓄をおろしてでも買ってもらえるもの」という視点での商品開発、サービス開発が始まります。
というわけで今回は消費支出推進派(非金融の一般企業)はもっと明示的に、高齢者の貯蓄を消費に向かわせるための努力をすべきという点について書いてみました。次回は、その高齢者の貯蓄を切り崩すことに成功しているビジネスについて考えてみます。
そんじゃーね。
兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。著書に『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』がある。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN」
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