30代前半が、“ゆきづまって”いる吉田典史の時事日想(1/3 ページ)

» 2011年03月18日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

著者プロフィール:吉田典史(よしだ・のりふみ)

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2005年よりフリー。主に、経営、経済分野で取材・執筆・編集を続ける。雑誌では『人事マネジメント』(ビジネスパブリッシング社)や『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)、インターネットではNBオンライン(日経BP社)やダイヤモンドオンライン(ダイヤモンド社)で執筆中。このほか日本マンパワーや専門学校で文章指導の講師を務める。

著書に『非正社員から正社員になる!』(光文社)、『年収1000万円!稼ぐ「ライター」の仕事術』(同文舘出版)、『あの日、「負け組社員」になった…他人事ではない"会社の落とし穴"の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)、『いますぐ「さすが」と言いなさい!』(ビジネス社)など。ブログ「吉田典史の編集部」、Twitterアカウント:@katigumi


 「30代前半で『世の中、しょせん、こんなもの』と割り切るのは大きな勘違い。はっきり言って、その考えは甘い」――。

 経営コンサルタントで株式会社シャイニング代表の下田令雄成(しもだ・れおな)氏は、こう言う。30代前半の会社員(この場合は、正社員)で、会社に冷めた思いをもっている人たちへの厳しい見方である。日ごろ、多くの企業で20〜30代社員の人材育成を手掛けていることもあり、思うことがあるようだ。

 2010年4月、時事日想「なぜ30代前半になると、“ゆきづまって”くるのだろうか」で下田氏を取材した際、会社員にとって30代前半は1つの曲がり角と話していた。この時期に成長が止まる社員を「思考停止状態に陥っている」として、その理由に上司などとの関係を挙げた。

 今回はさらに下田氏に、30代前半の社員がゆきづまる理由を伺った。するとさっそく厳しい言葉が返ってきた。

 「この世代がぶつかる壁は『スランプ』 という言葉を使う以前のものだと思う。まだ本当の意味でプロになりきれていない人が多い。もっと貪欲に仕事を覚えようとしていいのでないか」。

 そのうえで、仕事にのめり込むことができない事情も分析した。その理由は主に2つあり、1つは賃金がこの10数年、伸び悩んでいること、そしてもう1つが転職であるという。

 「賃金は思い描いたように増えないが、これは他の世代も同じ。ところが、30代の仕事の量は他の世代に比べて増えている。しかし、それをこなす権限がさほど委譲されるわけではない。ましてや、役職がつくこともない。上司たちからは、20代の後輩たちと同じ扱いを受ける。今後5〜10年後にこの状況を抜け出すメドがあればいいが、それがない。ここに悶々とした思いを抱え込む一因がある」。

 私がこれに捕足をすると、依然として多くの中堅・大企業ではよほどのことがない限りは、20代後半〜30代前半で主任にはなれる。だがそこから上の課長補佐などのポストの数は90年代に比べると、減少傾向にある。

 30代前半の人が転職する際は、20代後半の「第2新卒」とは違い、ある程度のキャリアと実績が求められる。従って、優秀な人とそうでない人の差がつきやすい。

 下田氏は、特にここ数年は、その傾向がはっきりとしているととらえる。

 「不況の影響もあり、企業は転職試験で一段とハードルを高くしている。以前よりも、30代前半の優秀な人は次の職場に移りやすく、普通のレベルの人はそれが一層難しくなっている。結局、平々凡々としたレベルの社員は今の職場に不満を抱えつつも、残るしかない」。

 このように、30代前半の正社員の間で差がつきやすくなっていると説明する。これは今後の、企業の人事を考えるうえで大切な指摘だと私は思う。

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