コラム
» 2011年03月16日 08時00分 UPDATE

今こそ阪神大震災後の15年を振り返ろう

東日本大震災という未曾有の大災害を受け、助け合いの精神が日本に生まれているように思える。しかし、阪神大震災の後の推移を思い返すと、その思いが継続的に続くとは言えないかもしれない。

[川口雅裕,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール

川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

イニシアチブ・パートナーズ代表。京都大学教育学部卒業後、1988年にリクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。2010年1月にイニシアチブ・パートナーズを設立。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ


 東北地方を中心とする未曾有の大災害。ネット上では「みんなで助け合える、落ち着いて受け止めて行動できるという点において、改めて日本という国や日本人の良さ、すばらしさを感じる」という意見や、「これをきっかけに日本は変われるのではないか」という期待や感動のエピソード、復興に向けた寄付や協力の呼びかけなどが飛び交っています。

 ラジオはまだいいとして、できる限りインパクトの大きな映像を繰り返し流し続けようというだけのテレビや、速報性という点でこういう状況では見劣りする新聞などしかなかった時代と比べてみれば、インターネットの優れた部分がいかんなく発揮されていると言えます。

 しかしながら、ネット上で飛び交う声やメッセージを見ていて、やや違和感を覚えることがあるのも事実です。特に「日本という国や日本人はやっぱりすばらしい」「これをきっかけに日本は変われる」といった書き込み。そう思う部分もありますし、「そうなればいい」とも思いますが、ふと「規模も被害のレベルも違うとはいえ阪神大震災で同じようなことが起こり、日本は、関西はどう変わったのか」と考えてしまいます。

 被災直後からある程度復興が進むまでは、多くの人たちの心の中で関西への愛着が強くなり、「困っている人を助ける」「弱者に配慮する」「人の幸せを喜ぶ」「人のためにできることを考える」という雰囲気になりました。が、今となっては「震災前と何も変わっていない」と言っていいでしょう。

 お年寄りや子どもたちを助け、互いに支えあっている東北の映像をあれだけ見ても、大阪の街ではやっぱり、配慮もマナーも相変わらずで、自分たちに引き付けて考えることができません。済んだら終わり。忘れてしまう。経済においても社会においても阪神大震災をきっかけにして良くなったことなど、見つけるのが難しい。

 「今回は阪神とは地震や被害の規模が違うから変われるはずだ」とは思えません。本当にこれをきっかけにして、社会や経済や、私たち自身の考え方や振る舞いが変われるか。救援・支援・復興の次に考えなければならないのは、このことだと思います。

 3月14日、都知事が今回の東日本大震災をとらえて、「金銭欲・物欲・性欲を洗い流せという天罰だ。天罰に見舞われた人たちはかわいそうだ」と言ったようで、言うタイミングと表現が悪いのは相変わらずですが、少なくとも、私たちは「今の気持ちを持ち続けることができるかどうか」が問われているのだと考えます。

 今、多くの人が抱いている気持ちが、一時的な感傷や雰囲気や流行に終わるのか、それともみんなの心の奥底にとどまって、価値観や行動に変化が生まれ、大きなうねりにつなげていけるのか、それが問われているのだと思います。(川口雅裕)

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