なぜ中途採用者はリストラされやすいのか吉田典史の時事日想(2/3 ページ)

» 2011年03月11日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

即戦力とは言うけれど……

 この話を聞いた時、私は会社員の頃を思い起こした。そこでも中途採用試験を何度か行っていた。私が見た、雇う側の“誤解”を挙げよう。

 例えば、面接に参加していた私の上司(当時40代後半、部長)は、人事部の役職者に内線電話でこんなことをよく言っていた。面接を行う前の、職務経歴書で書類選考をする段階である。「彼女は前職が●●社だから、即戦力として……」

 こういうやりとりを周囲に聞こえるようにしていることは問題があるが、あらかじめ職務経歴書を見て、ある程度の評価をしておくことは大切だ。しかし、「紙切れを数枚見ただけでここまで言い切れるのだろうか」と私には思えた。私の場合、その人の職務遂行能力は少なくとも2時間〜3時間くらいは話し合わないと見えてこない。その意味で、上司らの判断は“誤解”に思えて仕方がなかった。

 実際、入社した人を観察していると、必ずしも即戦力とは言えない。「なるほど、すばらしい」と思える結果が出るのは、30代後半の社員で3年はかかっていた。ただしこのような人はごく少数で、その多くは優秀と言えないレベルだった。

 一方で、転職者にも“誤解”があった。例えば、面接官らと仕事の内容や求められるレベルについて徹底した話し合いをしていないのだ。賃金などの労働条件については人事部と合意ができていたようが、仕事については漠然としたコンセンサスだったと本人たちから聞いた。これも甘いというか、「よその会社に行けば何とかなる」と“誤解”していないだろうか。

 私が勤務していた会社は社員に対し、温情的な態度であった。だから、即戦力と言えない人を辞めさせなかった。しかし、世の中にはあっという間に引導を渡す会社も少なくない。

 設楽さんはこう語る。「ここ数年、企業は中途採用で入社した後、半年〜1年以内でその社員を『これは優秀』『これはダメ』と判断する傾向が強い。中小企業で厳しい経営状態のところは、ダメと烙印(らくいん)を押された人を1〜2年以内で辞めさせることもある」

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